ドコモ・au・ソフトバンク…自社経済圏強化でARPU増狙う、低料金顧客を大容量に誘導
携帯通信3社の2024年4―6月期連結決算は、2社が増収営業増益だった。NTTドコモは携帯事業の収益減で営業減益となった。楽天モバイルが家族や若者向けの割引と自社経済圏を生かした特典付与で勢いを増し、ライトユーザー市場での対応が求められている。低料金プランの競争が激化する中、金融決済など非通信サービスの強化で自社経済圏の魅力を高め、ARPU(利用者1人当たりの平均月間収入)を上げる動きがさらに加速しそうだ。(編集委員・水嶋真人)
「ARPUが下がっている要因は(低料金プランである)イルモの販売だ」―。NTTの島田明社長は、ドコモの4―6月期のARPUが前年同期比80円減の3910円に下落した理由をこう示す。
ドコモは23年7月に0・5ギガバイト(ギガは10億)までのデータ利用で月額基本料金が550円(消費税込み)のイルモを投入した。島田社長は「イルモは競争対抗上、戦略的に出している。そこはARPUの下落要因になる」と指摘する。
携帯大手3社の戦略は低料金プランで獲得した顧客に自社経済圏の各サービスを利用してもらい大容量プランへの移行を促し、ARPU増につなげることだ。ドコモは自社の決済・金融サービスの利用に応じてdポイントの還元率が高まる料金プラン「エクシモ・ポイ活」を1日に投入した。島田社長は「(小容量から無制限のデータ利用まで対応した)エクシモの販売強化でARPUを上げていく」と意気込む。
ソフトバンクはオンライン専用の携帯通信ブランド「LINEMO(ラインモ)」で、毎月のデータ使用量に応じて2段階の月額基本料を自動適用する「LINEMOベストプラン」の提供を7月30日に始めた。宮川潤一社長は、自動適用型プランを提供している楽天モバイルへの対抗策であることを認めた上で「なかなか順調な滑り出しだ」と述べた。
携帯事業のARPUは同10円増の3730円。自社グループのスマホ決済「PayPay(ペイペイ)」のポイント付与率が増える料金プラン「ペイトク」が寄与した。自社経済圏の利用で得られる特典を生かした料金プランの競争も過熱する中、「第2のペイトクのようなものも模索する」(宮川社長)。
KDDIの通信ARPUは前年同期と同じ3930円だった。高橋誠社長は「au、UQモバイルのARPUが伸びている。多くの人がauの使い放題プラン、UQモバイルの中大容量プランを選んでいる」と話す。
UQモバイルからauへの移行率は前年同期比2・2倍になった。データ容量使い放題と金融サービスの利用で金利やポイント還元率を優遇する料金プラン「auマネ活プラン」の契約数は100万を超えた。今後もARPU増に貢献する大容量・無制限プランへの移行を促す。