ファッション通にも人気の長靴は、ゴム張り手袋から始まった―アトム

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年間10種類程度の新製品を投入
**滑り止め性能を次々展開
 手のひらの部分にゴムを張った「ゴム張り手袋」は滑り止め性能が高く、運送業や製造業の現場作業には欠かせない。アトム(広島県竹原市、平雄一郎社長、0846・26・1258)はゴム張り手袋で3強の一角を占める手袋メーカー。多様化するニーズに応えるため、開発力の強化を図ってきた。最近ではコンパクトにたためる長靴がアウトドア用途にヒットするなど新たな需要を広げている。

 同社が新製品開発のキーワードとして掲げているのが「必要な手袋や長靴は作業の種類だけある」というもの。カタログにはその言葉通り、耐寒性や耐油性などさまざまなニーズに応えた製品がある。品目数は他社からの仕入れ品も含めて600―700種類にのぼる。

 最近のヒットは振動軽減手袋「しんげんくん」。手のひら部分に張った、ブロック状の突起がついた発泡ゴムで、作業用工具などからの振動を吸収する。従来の振動軽減手袋は、ゲルシートや空気チューブを内蔵した構造で、価格は5000―1万円していた。この商品では普及が進んだゴム張り構造を採用し、千数百円に抑えた。

 目立つ商品ではない作業用手袋だが、同社は毎年10種類程度を新製品として市場投入する。新製品とまでいかなくても、破れやすい箇所にだけゴムを二重化するといった細かい改良を常に加えているという。

営業情報を共有


 こうした改良の種になるのが営業情報だ。営業マンが毎日全国を回ってニーズを聞き出し、社内システムで情報共有して改善につなげる。特に重視しているのが、最終ユーザーを直接訪問すること。振動軽減手袋はチェーンソーなどを使う森林組合からの依頼で開発に結びつけた。少しの改良なら、研究開発部門に話を通さず、生産技術担当者がラインを改良して対応することもあるという。

 また、売り上げの約2割を占め、手袋に次ぐ柱となっているのが履物類だ。事業化はゴム張り手袋よりも早く、1963年にナイロン足袋にゴム加工を施し「田植え足袋」として発売したのが始まり。水田での農作業は当時、はだしか和足袋でするのが主流だった。77年にはナイロン靴下にゴムを張って長靴状にした「田植え長靴」を発売。ぬかるみにはまっても脱げにくい田植え長靴は、競合メーカーがほぼ撤退した現在、独占状態。年間20万足を売り上げる中核商品となっている。

丸めて保存できる長靴


 好評のもう一つの要因は長靴を丸めて保存できること。保存にもスペースを取らない。すねの部分が柔らかいゴム張り構造ならではの特徴だ。「靴メーカーではこうした発想はなかなかできないのでは」と管理部の坂本真二氏。

 この開発実績が農作業以外の用途開拓に生きた。05年、日本野鳥の会からの依頼でバードウオッチング用の長靴を開発。さらに12年には、素材にウエットスーツの材料を使ってファッション性を高めた長靴「グリーンマスター」を発売し、14年度のグッドデザイン賞を受賞した。同社はこれからも柔軟な姿勢で新製品開発を進める構えだ。
(文=広島編集委員・清水信彦)

日刊工業新聞2016年4月8日 モノづくり面

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

バードウォッチング用の長靴は見た目もおしゃれでカラーバリエーションもあり、軽くて折りたためる点も好評。アパレルショップや雑貨屋でも販売され、ファッションとして取り入れている人もよく見かけます。

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