待ったなし、農業のスマート化…日本農薬がAI活用に注力
日本農薬は人工知能(AI)を活用したサービスの充実に力を入れている。国内は農業者の高齢化などで1人当たりの作業負荷が高まり続ける見通しで、農業のスマート化は待ったなし。NTTデータCCS(東京都品川区)と共同開発したスマートフォン用アプリケーション「レイミーのAI病害虫雑草診断」には、日本農薬以外の農薬メーカー5社も参画。足元でダウンロード数を着実に増やしている。(渋谷拓海)
レイミーのAI病害虫雑草診断は、有識者と同等の防除指導能力を目指して開発した。被害を受けた農作物をスマホで撮影すると、AIによる診断で原因となる病害虫や雑草の候補を提示。その上で、参画するメーカー全6社400剤以上の中から農薬を紹介する。水稲や野菜など、診断可能な農作物は順次拡大中だ。日本農薬としては、農業者にとって身近な指導者層の将来の減少にも備えたい考えだ。
現在、一般ユーザーの利用は無料としている。2020年にサービス提供を開始し、ダウンロード数は6月時点で18万を超えた。日本農薬は国内の基幹的農業者数がいずれ30万人で下げ止まるとみており、早期のダウンロード数30万を目指す。
こうした中、取り組んでいるのがAIによる診断精度の向上だ。長年に渡り農薬そのものの研究開発をしてきた“部隊”が撮影した膨大な画像をAIの学習に活用。診断対象の農作物や病害虫・雑草は1100種にも上り、被害のほとんどに対応できるという。
アプリの使い勝手にもこだわった。同社外販事業本部長でスマート農業推進部長の谷元忠上席執行役員は「できるだけシンプルに、機能が多過ぎないようにした」という。英語表記にも対応し、国内で農業に従事する外国人にとっても使いやすいようにした。
農薬をめぐっては、国内主要メーカーの出荷額は微増が続く半面、出荷数量は減少傾向にある。一方、海外は新興国を中心に将来の食料不足や農園の大規模化などを背景に農薬需要の拡大が見込まれている。
日本農薬もインドやベトナム、台湾、韓国でこのサービスを提供しているが、まずは豊富な知見を持つ国内での展開に集中する方針だ。