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17年ぶり金利のある世界、メガバンクの追い風に

17年ぶり金利のある世界、メガバンクの追い風に

17年ぶりに金利のある世界に戻り経営環境の好転を収益につなげている

旺盛な資金需要に対応

日銀による政策金利の引き上げがメガバンク3行の業績の追い風になっている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2024年度に業務粗利益の押し上げ効果として600億―800億円を見込み、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は同年度に700億円程度のプラスを見込む。みずほフィナンシャルグループ(FG)を含め、3社の4―6月期連結決算はいずれも計画値を上回った。17年ぶりに金利のある世界に戻り、経営環境の好転を収益につなげている形だ。

SMFGの4―6月期連結決算は業務純益が前年同期比31・3%増の4688億円、純利益が同49・7%増の3714億円といずれも4―6月期として過去最高を更新した。国内の法人向けビジネスがけん引したほか、為替や外貨調達などの要因も増益に寄与した。6月末の国内貸出金残高は同5%増の64兆3000億円と、大企業を中心に活発な資金需要を捉えて伸ばしている。

MUFGの4―6月期連結決算は業務純益が同21・8%増の6781億円。個人・法人の顧客部門が総じて好調を維持し、為替や円金利上昇のプラス効果もあった。金融庁から行政処分を受けた影響は数十億円のマイナスを見込んでいるが、「4―6月期は大きな影響が出ていない」(財務企画部)。

みずほFGの4―6月期連結決算は、純利益が同17%増の2893億円だった。3月のマイナス金利解除の影響として450億円程度のプラス効果を見込む。峯岸寛執行役員財務企画部部長は日銀の金融正常化について「中堅中企業を中心に利上げの影響が波及することは当然あるので、丁寧な対応が求められる」と述べた。

政策金利0・25%への引き上げを受け、メガバンク3社や三井住友信託銀行、りそな銀行など大手各行は融資金利の指標となる短期プライムレートや預金金利の引き上げに動き出した。短プラの引き上げは17年半ぶりだ。調達金利と貸出金利の差である利ざやの改善が見込まれる。各行はマイナス金利の厳しい局面で店舗統廃合、不採算事業撤退、経費削減などの合理化を進めてきたため、収益を上げやすくなっている。

日銀の植田和男総裁は「経済、物価が見通しに沿って動いていけば引き続き金利を引き上げていく」としている。追加利上げは銀行界にとってさらなる増益要因となる。

企業の24年度設備投資計画は大幅に増える見通しで、旺盛な資金需要が続く。利上げの影響が大きい中堅中小企業の事業再生や統廃合の機会も増える。銀行は金融仲介機能をしっかりと果たすことが重要になる。


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日刊工業新聞 2024年08月06日

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