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〝濃厚な経歴〟持つネスレ日本のプロダクトマネジャー、睡眠支援サービスを立ち上げた理由

〝濃厚な経歴〟持つネスレ日本のプロダクトマネジャー、睡眠支援サービスを立ち上げた理由

働く人のより良い睡眠習慣の確立を支援するサービスを作りたい…と藤原さん

ネスレ日本(神戸市中央区)の藤原亮太さんは、企業や医療機関向けに従業員の睡眠をサポートする事業を担当する。2020年10月に入社したばかりだったが、23年に事業を立ち上げた。「良い睡眠を得られないと健康リスクが高まる。働く人のより良い睡眠習慣の確立を支援するサービスを作りたい」という思いからだった。

持ち前の行動力は、経歴に現れている。前職は国際協力機構(JICA)の海外協力隊、その前は総合商社に勤務していた。科学技術を分かりやすく伝える「国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ」でもある。

31歳とは思えない“濃厚な経歴”の起点となったのが、高校時代に出会ったマンガ『もやしもん』だ。菌が見える特殊能力を持つ少年の物語に夢中となり、生命科学に興味を持った。大学では植物の「栄養欠乏応答」の研究に没頭。総合商社時代、海外協力隊の募集を知った。「迷ったが、チャンス」と参加を決意。退社して退路を断った。

19年7月、ヨルダンに派遣され、王立植物園で調査研究の支援に従事した。日本人は藤原さんだけ。同僚と言語や宗教が違っても「研究の作法は共通なので、やりやすかった」とやりがいを感じた。

だが、コロナ禍で帰国を余儀なくされ20年10月、ネスレ日本に入社した。睡眠の深さ向上が報告されている「GABA」成分を配合したサプリメントに出会う。米国製を同社が国内販売していた。

23年春、事業を着想すると睡眠を測定できる端末を手がけるグーグルの担当者に連絡を入れた。同年11月、サプリと端末、睡眠トレーニングの3点をセットにした睡眠サポート事業を発表した。短期間だったが、社内外をまとめて事業化できた。

激動の20代だったが、ぶれない思いがある。「科学技術の社会実装が課題。技術と社会をつなぐ仕事をしたいという思いは、キャリアで一貫している」と言葉に力を込める。技術を社会に役立てようとするパワーがあふれている。

【略歴】ふじわら・りょうた 17年(平29)東工大院生命理工学研究科生体システム専攻修了、31歳。学生時代と最新版の生物学の教科書を並べ、違いを発見するのが楽しみ。「生物学の進歩を感じられる」と目を輝かせる。
日刊工業新聞 2024年08月02日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
コーヒーといえば、飲むと眠れなくなりますよね。なのにネスレが睡眠サポートというのは意外でした。そして藤原さんも、タブーとかなく、いろいろと挑戦する方という印象を受けました。

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