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中小企業の特許出願、初の年間4万件超えのワケ

2023年の国内中小企業の特許出願件数が09年の統計以降、初めて年間4万件を超えたことが、特許庁が取りまとめた24年版「特許行政年次報告書」で分かった。中小経営においても知的財産戦略が重視されてきたことに加え、19年度以降の制度拡充による中小向け特許料金の減免制度や手続きの簡素化などで特許出願件数が伸長したとみられる。

23年の中小の出願件数は前年比約1・4%増の4万221件で、日本からの出願の17・6%を占める。特許庁の担当者は4万件を超えたことに関し、「知財を活用する中小の裾野が広がってきた」と手応えを示す。

中小は人材などの経営資源が限られ、特許や意匠など知財を用いたビジネス展開が難しいといった課題がある。そこで、特許庁は23年に工業所有権情報・研修館(INPIT)や日本弁理士会、日本商工会議所で構成する「知財経営支援ネットワーク」を発足させるなど、地域の中小などへの知財活用の支援活動にも力を入れている。

中小を含めた23年の特許庁への特許出願件数は、特許行政年次報告書によれば、22年比約3・7%増の30万133件。足元で人工知能(AI)関連の出願が増加するなど、開発競争が激しい分野が件数を押し上げた。内訳では特許出願件数で上位30社による出願が全体の25%を占め、大手製造業を中心に情報通信技術(ICT)など技術革新への対応を強化していることがうかがえる。

日刊工業新聞 2024年08月02日

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