「半固体電池」ロボットで生産、日本ガイシが効率高める生産現場
省人化・拠点集約で効率向上
日本ガイシの超小型・薄型リチウムイオン電池(LiB)「エナセラ」。同電池の組み立てを行うNGKセラミックデバイス都留工場(山梨県都留市)では、電池の安全性や信頼性を高めるためデジタル技術の活用が進む。同社は2030年に新規事業で1000億円以上の売上高を実現する目標を掲げ、エナセラはその一角を担う。需要拡大が見込まれる中、生産拠点の集約も図り、生産効率化につなげる方針だ。(名古屋・狐塚真子)
エナセラは電極成分を焼き固めたセラミックス製の積層電池部材に、微量の電解液を染み込ませた半固体電池。結晶の向きを緻密に制御できる独自の焼結技術により、高い出力を実現。またバインダーも含まれておらず、高容量、高耐熱、長寿命などの特徴も持つ。
日本ガイシの小泉貴昭電子デバイス事業部長は「安全な電池を目指して開発してきた」と話す。LiBの製造や使用段階での事故原因の一つは異物の混入。こうした中、クリーンルーム環境を有する都留工場の活用を決めた。
都留工場では、名古屋市熱田区で生産する正極板などの各電極部材の組み立て、検査といった最終工程を担う。パウチタイプのエナセラは現在、月約20万個生産できる体制を整えるが、大半の工程は安全性などを考慮し、人が触れないようロボットによって自動化されている。
各部材を加工、積層し、電池に組み立てるラインの途中には、電極のサイズや割れなどを自動で検知するカメラを設置。またエナセラの外装部分には、電池がいつ、どの工程を通過したかという情報を追える2次元コード「QRコード」を印刷する。同電池は多様な使い方や利用先が想定される中、電池生産のトレーサビリティー(履歴管理)を確保できる仕組みとした。
電池の性能に関わる注液工程もロボットにより自動化。注液後は充電を経て電池にたまるガスを抜き、検査を経て出荷に至る。部材の積層からガス抜きの工程までは、作業員1人だけで対応可能という自動化ぶりだ。
現在、日本ガイシでは3種類のパウチタイプと、2種類のボタン型タイプのエナセラを取り扱う。これまで「顧客のニーズを見ながら品種を絞ったことで生産効率を高めてきた」(小泉事業部長)同社。需要拡大が見込まれる中、さらなる効率化に向けては、名古屋市熱田区の電極部材生産工程も都留工場に移管する方針だ。省人化や製造期間の短縮、在庫の縮減にもつながる取り組みとして、数年以内の実行を目指す。