ピックアップトラック5割増…いすゞがアフリカで拡販、中古車と戦うグローバル戦略の中身
年4.5万台、ケニアも生産
いすゞ自動車は2031年3月期にサブサハラ・アフリカ地域のピックアップトラック(LCV)販売台数を24年3月期比で5割増の年4万5000台に引き上げる。既にいすゞの販売シェアが高いケニアや南アフリカ共和国以外の国も、今後経済発展が進むとみて拡販する。いすゞは30年以降の人口増に伴う需要急拡大の可能性を踏まえ、商用車(CV)を含めた同地域の生産最適化に合計480億円を投じる計画で、足場固めを急ぐ。
LCVは東南アジアやアフリカ地域などで、作物をプラントから市場に運ぶなどのビジネス用途で使われることが多い。また乗用として人も運べるなど、地域で欠かせない“足”となっている。いすゞはLCVを100以上の国・地域で販売し、戦略車と位置付ける。
サブサハラ・アフリカ地域向けのLCVはタイ工場で部品を作り、南アフリカ工場でノックダウン生産している。今後、現在CVのみを生産しているケニア工場でもLCVの生産を始めて、周辺国に輸出する体制を構築。南アフリカ工場はLCVの生産能力増強を計画する。
サブサハラ・アフリカ地域の各国ごとに異なる政策や需要変動などを加味。CV生産とのバランスを取り、最も効率的に生産できる体制を整える計画だ。
現地法人のトップも日本人から現地採用者に変える。「商慣習、言語、政府や業界との結び付きを考えると、各国で何人か雇用することにリソースを投じる方がより拡販できる」(国房太郎LCV事業部バイスプレジデント)という。
アフリカでは所得水準の観点から、日本などから輸入する中古車が普及する。一方でケニアでは「初回登録年月日より8年未満であること」といった中古車輸入規制が敷かれるなど「中古車締め出し」をする国も出てきた。
中古車と戦える販売戦略として、いすゞは約3年前から新型車と1世代前のモデルの両方を扱う「新旧併売」を実施。サブサハラ・アフリカ地域で販売シェアを約4%伸ばした経緯もある。商品戦略、トップマネジメント、効率的な生産体制といった一連の施策で同地域を攻略する。
東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは「グローバルサウスは(商用車メーカーの)成長に向けた重要なマーケット。いすゞの新旧併売など、同地域に対する戦略も進んでいる」と評価する。