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還暦前の「節目検診」、先端人間ドックは高額も自己投資

まもなく還暦を迎えることから、一生に数回の「節目健診」を受けた。東京医科歯科大学病院が手がける先端人間ドックだ。脳ドックと心臓ドックの機能も含め、最初から精密検査を実施するイメージで、保険適用外の自己投資となる。

生来、頑強でないため体調には注意をし、公的ながん健診も受けてきた。突然、深刻な疾患に直面することはないはずだ。早期発見なら様子見や共存となり、中程度の不具合が判明すれば「今、見つかってよかった」と捉えて治療に入ればよいと考えた。結果、大きな心配はないと判明した。

定年退職までのファーストステージでは、「重い病気で収入を失ったら」と心配で、個人医療保険とがん保険を続けてきた。けれど人生は100年時代。セカンドステージに入る段階で、これらの保険は終了のつもりだ。

もっとも私自身、過度の健康志向に陥らないよう気を付けている。さほど問題のない異変に敏感になり、大規模病院へ通院し続けることは、時間や医療費のムダだし、働き方改革で大変な医療現場にも申し訳ない。

大学病院だから、と100%の安心安全を求めることも適切でない。リスクゼロがあり得ないのは、製造やサービスの現場でも当然だ。なのに私たちは医療のような公的な分野には、つい過剰な要求をしがちだ。医療事故の裁判でもこの点がもどかしいと聞く。同大では判事、検事向けの病院研修を継続的に実施しているという。

保険適用の医療も通常の健診も、対象は国民全体で、費用対効果が高いものに限られる。より高度なものを求めるなら自費で高くて当然だ。ちなみに私が受けた人間ドックの価格は32万円。適切だと振り返っている。

日刊工業新聞 2024年07月22日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
約30万円という価格設定に、知人の多くは驚きます。ですが脳ドック、心臓ドックもそれぞれ5万円程度(自由診療ですから、安ければ安いなり…)です。Webで「どれが安いのか、本当に効果的か」を調べ上げる労力を避けたかったので、信頼できる人のお薦めを受けて即決しました。定年退職後は一般に収入が減るので、「お金を使うべきは、今」と判断しましたし、ここで受診しておけば10年は心配ないだろうとも考えました。数年前までは「子どももいないし、定年退職で職業人人生を終えても構わないかも」と思っていました。ですが、日本人女性の平均的な寿命は87歳、自分は100歳まで生きる可能性が高いと思案した結果、「70歳までは、社会のプラスとなる仕事を続けていこう」と改心。そのためにはこの価格はリーズナブルだと判断したのでした。

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