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営業利益率5%超へ…井関農機、生産最適化で利益ねん出

営業利益率5%超へ…井関農機、生産最適化で利益ねん出

エンジン生産を集約する松山製造所

井関農機が収益体質改善に向けた改革を本格始動する。2027年12月期に営業利益率5%以上(23年12月期は1・3%)を目指す計画「プロジェクトZ」の具体的施策を策定。営業利益ベースで、生産・開発の最適化や国内営業の深化を骨子とする抜本的構造改革効果で60億円以上、海外事業拡大などの成長戦略で15億円以上をそれぞれねん出する。国内農機市場の成長が見込めない中、欧州など海外市場の強化と大型機、環境、先端農業など成長分野の展開に活路を見いだす。(編集委員・嶋田歩)

「構造改革の中には痛みを伴うものもある。しかし、この痛みを乗り越えなければ井関の未来はない」。井関農機の冨安司郎社長は22日に開いたオンライン会見で、構造改革の実施に不退転の決意を示した。

国内市場が縮小する中でも、同社は国内に複数の生産、販売子会社を抱えてきたことで、営業利益率は21年12月期の2・6%から23年12月期には半減。プロジェクトZを推進し、高コスト体質からの脱却を目指す。

施策の中で大きな利益効果を見込むのが生産拠点の集約だ。現在は松山市でトラクターとエンジン、油圧機器、熊本県益城町でコンバイン、新潟県三条市で田植え機を生産しているが、25年末に熊本県での生産を終了し、松山市に移管する。ゆくゆくは田植え機も松山市で生産して組み立て工場を集約、新潟県は油圧機器生産と分業を図る。「国内農機生産がどんどん減っている中でトラクターとコンバイン、田植え機を別の工場で生産しているのは割に合わない」(冨安社長)とし、再編に動く。

また営業面でも25年1月に広域販売会社6社と三重ヰセキ販売(津市)を経営統合し、在庫拠点の最適化と物流体制の見直しでコスト削減を図る。

一方、成長戦略でカギとなるのが欧州事業の拡大と、国内市場での大型機械強化や環境分野への取り組みだ。

特に欧州では電動芝刈り機を含む環境対応製品を拡充するほか、提携先であるインドのTAFEのノウハウを活用して農機の低コストモデルも投入する。「TAFEの得意な部品を見極めると同時に、部品活用と共同開発を製品によって使い分ける」(小田切元専務執行役員)方針だ。

日刊工業新聞 2024年07月23日

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