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「クルマの知能化」に商機あり、サプライヤーの製品・技術開発競争が激化

「人とくるま展」でSDV向け技術披露
「クルマの知能化」に商機あり、サプライヤーの製品・技術開発競争が激化

アイカ工業の3次元加飾ハードコートフィルムは、光透過の印刷技術と組み合わせることでディスプレーやスイッチを表示できる

自動車メーカーが「ソフトウエア定義車両(SDV)」をはじめとした“クルマの知能化”に注力するなか、サプライヤーも高機能化に対応する製品・技術の開発にしのぎを削る。19日まで愛知県国際展示場(愛知県常滑市)で開催された自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2024 NAGOYA」でも各社が技術の一端を披露している。(名古屋・川口拓洋、同・増田晴香)

SDVはソフトの更新により車の機能や価値を高めていく。経済産業省と国土交通省による車のデジタル変革(DX)戦略案では、SDVの日系シェアを2030年に3割にする目標が設定されるなど、技術開発競争の激化が予想される。

住友理工と産総研はシートにセンサーを内蔵し心拍などのバイタル情報を推定するシステムの開発を進める

マックシステムズ(名古屋市中区)はSDVに対応した電子制御ユニット(ECU)の走行シミュレーションができるシステムの提供を開始した。走行中の通信環境を再現し、実車試験を削減する。走行データを基地局シミュレーターなどに入力し「位置が正しく取得できるか」「その地点での電波環境はどうか」などを確認できる。オーバー・ジ・エア(OTA)でのソフト更新技術の向上に貢献する。

日本テキサス・インスツルメンツはSDVの普及を見据え、一定の領域ごとにカメラやセンサーなどのデータを吸い上げる「ゾーン・アーキテクチャー」を提案する。これまでは機能ごとにECUを搭載する「ドメイン・アーキテクチャー」が主流だった。ゾーンにすることでケーブル配線を短縮し、通信速度の改善や車両内部に張り巡らせた配線を低減できる。主力の半導体をはじめとした車載エレクトロニクス製品を提供し、車車間・路車間通信(V2X)などに対応する。

ドライバーの体調や脇見運転・居眠り運転を検知する「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」への期待も大きい。住友理工は産業技術総合研究所(産総研)と共同で、シートにセンサーを内蔵し心拍などのバイタル情報を推定するシステムを開発中。結果を基にドライバーに警告したり、運転システムと連動したりすることを想定する。

テクノアクセルネットワークス(神戸市灘区)はカメラで顔面血流情報を計測し、独自のアルゴリズムにより体調を推定するシステムを試作した。精度向上に取り組み、「将来は鉄道やバス、トラック向けに展開を狙う」(山本泰志シニアエキスパート)。

車の多機能化で内外装も変化している。アイカ工業は塗装の代替となる「3次元加飾ハードコートフィルム」を次世代車にも提案する。同フィルムと光透過の印刷技術を組み合わせれば、デザイン性を損なわずに内装のディスプレーやスイッチを表示できる。外装では、例えば自動運転車が歩行者とのコミュニケーションを図るための表示が可能。モビリティ素材開発室の岡本真樹主任研究員は「車の多機能化に伴うデザインのニーズに対応する」と話す。


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日刊工業新聞 2024年07月19日

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