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花王、調達先の倫理リスク対策を“世界標準”に合わせる

年内までにSedexへの加盟社を3倍の100社に引き上げ
 花王はサプライヤーに対し、倫理面での事業リスク管理を強化する。世界最大規模のサプライヤー倫理情報共有プラットフォーム「Sedex」に加盟する国内の取引先企業を、年内に現状の約3倍にあたる100社に引き上げる。2015年の主要国首脳会議では労働条件に配慮した「責任あるサプライチェーンの推進」が首脳宣言に盛り込まれた。企業の社会的責任(CSR)として、労働環境や人権への配慮が一層求められている。

 Sedexは世界各国のバイヤー企業とサプライヤー企業の間で倫理情報が共有できるプラットフォーム。英非営利団体が運営し、世界150カ国、3万9000社以上の企業や工場などが会員となっている。

 サプライヤーはSedexに入会し、世界共通のアンケートに回答する。Sedexは労働基準、健康と安全、環境、ビジネス倫理の四つの観点を中心にサプライヤーの問題点や改善状況を調査。バイヤー企業が評価・管理する。

 花王はパーム油やパルプなどの直接材で海外を含め3500社、機器で2500社、間接材で約1万社と取引がある。これまでも自社で「調達先ガイドライン」を作成し順守状況を調査してきたが、透明性の高い第三者認証のSedexに移行する。

 花王は加盟数拡大に向け3月の「お取引先懇談会」に参加したサプライヤー280社に向けて方針を示した。20年には「取引先の100%」(田中秀輝執行役員)の加盟を目指す。加盟後は、アンケートをもとに基準に満たないサプライヤーの実態や課題を把握し、改善に向けた戸別訪問や監査をする方針だ。

日刊工業新聞2016年4月6日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
 Sedexは海外ではP&Gやユニリーバなど競合大手の加盟も広がるが、日本での認知は低い。国内ではバイヤーの立場では14年に花王、15年にJALのほかわずか3社にとどまる。サプライヤーの倫理問題は、外資系企業では不買運動や企業イメージの低下、投資家の投資見直しなど損失につながるリスクとして認識が進んでいる。

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