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「鴻海・シャープ連合」の勝機はどこだ!#02あえて披露したスマートハウス

世界トップの目からは「シャープの製造ラインは重複が多い」
「鴻海・シャープ連合」の勝機はどこだ!#02あえて披露したスマートハウス

鴻海とシャープのスマートハウス製品

 「両社でIoT(モノのインターネット)システム、スマート家電などに劇的な変化をもたらす」。シャープを買収する台湾・鴻海精密工業の郭台銘会長は、ディスプレーパネル以外にもシャープの家電や電子デバイスとの協業に積極的だ。ただ、事業によっては縮小や再編を促される可能性も否定できない。

 2日、シャープと鴻海は買収会見の会場で郭会長の意向を受け、報道陣向けに両社の製品を披露した。目立ったのは、コンセント器具や人感センサーなどのスマートハウス(次世代環境住宅)製品だ。会場内の実証施設「エコハウス」でも鴻海製品とシャープのIoT家電を展示した。シャープ関係者は「互いの技術を融合して先進的なITスマートハウスを開発する」と説明する。

 シャープの家電製品は、鴻海の取引先や郭会長の人脈を生かした製造・販売網の拡大が見込める。会見会場には早速、アジアの家電メーカーから祝儀が届き、連携の広がりを予感させた。

 また電子デバイスは「鴻海が受託製造する機器に部品を供給できる」(シャープ幹部)。鴻海の主要顧客の米アップルに納めるカメラモジュールや、センサー、IC、発光ダイオード(LED)などの半導体部品も受注増が見込める。

工場再編へ「自治体との交渉や、補助金の返納も考えていい」(鴻海)


 一方、売却や縮小が考えられるのが赤字の太陽電池事業。両社の最終合意には「シャープの事業の一体性を維持する」という鴻海側の義務条項の中に「ただしエネルギーソリューション事業の構造改革や、株主利益に即した事業の再編や処分を除く」との文言が加わった。

 郭鴻海会長は会見で「再建計画の詳細は話さない」と明言を避けたが、過去に「赤字の最大の原因」と指摘した太陽電池事業を問題視しているのは確実。シャープは4日、「太陽電池の状況をポジティブにするため蓄電池市場でシェア拡大を狙う」(黒澤正美エネルギーソリューション事業推進センター所長)と表明したが、太陽電池は国内市況も悪く、環境はネガティブだ。

 電子デバイスも受注増が期待される一方、2015年には広島県福山市や同三原市の工場設備に関し中国や台湾企業への売却が検討された。受託製造世界トップの鴻海幹部の目には「シャープは製造ラインの重複や無駄が多い」と映る。地方自治体の補助金に縛られて国内工場の再編も進まないため「自治体との交渉や、補助金の返納も考えていい」(鴻海幹部)と話す。

 鴻海が事業や設備を売却しシャープへの投資回収を考えても不思議はない。国内産業競争力維持を求める経済産業省幹部も「各工場を閉鎖するぐらいなら、どこかに売却してほしい」と話す。売却なら雇用とともに工場が持つ製造ノウハウを受け継げる。

 高橋興三シャープ社長は「家電、太陽電池、オフィス機器、電子デバイスがあることでシャープらしい商品が生み出せる」として一体運営の維持にこだわった。しかし、鴻海グループの中でシャープの一体性を維持し続けるのは難しい。今後は鴻海の力を生かしてシャープらしさを発揮する方法を模索することになるだろう。
日刊工業新聞2016年4月6日 電機・電子部品
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
シャープのユニークな家電製品の「企画力」を鴻海のサプライチェーンと販売力に乗せることができるか。製品も製造も日本の電機業界でありがちな「過剰品質」は少しずつ排除されていくだろう。

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