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20年超ぶり組織大改革、NEDO理事長が語る狙い

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は7月に機構改革を実施した。チームの規模を小さくし、現場に権限を持たせて自律分散型の組織に変わる。2003年にNEDOが独立行政法人化して以来の大改革になる。同時にスタートアップや中堅企業、海外展開支援を強化する。斎藤保理事長に組織改革と機能強化の狙いを聞いた。

-就任後1年をかけてNEDOの内部を見てきました。手応えはいかがですか。
 「NEDOの職員やステークホルダー(利害関係者)と話し、NEDOへの期待や責任の大きさをあらためて実感した。そしてNEDOに任される事業予算は拡大している。NEDOの人材の多様性を生かして各プロジェクトを成功に導いていきたい。NEDOのプロジェクトマネージャー(PM)は各企業のPMとは違い、自分の現場を持たない。企業などのプロジェクトを支援する立場だ。人脈を駆使してステークホルダーとコミュニケーションし、どうしたら事業者が力を発揮できるか、トラブルを回避するには誰の知恵を借りたらいいか先回りする。機構改革はこうした付加価値の高い仕事に注力してもらうことが目的だ」

-どんな組織になりますか。
 「アメーバ型の自律分散組織を目指している。チームを小回りの利くサイズにする。NEDOの職員はこの6年間で900人から1600人へと1・7倍に増え、組織各部の大きさがまちまちになっていた。スパン・オブ・コントロール(1人のマネージャーが管理できる人数や領域)を適正化して業務効率を高める。柔軟性が高まり、現場の知恵を生かしやすくなると見込んでいる。組織の名前も変わる。水素・アンモニアや再生可能エネルギー、サーキュラーエコノミーなど、ステークホルダーにとって事業内容が分かりやすい名称に変更する。業務システムも見直す。プロジェクトマネジメントの進め方を標準化し、定型業務は負荷を軽減する。事業者への伴走支援などの付加価値の高い業務にシフトしていく」

-中堅企業やスタートアップへの支援を強化します。
 「23年度のNEDOの支出の8800億円のうち、460億円ほどが中小企業やスタートアップの支援に充てられている。課題はNEDOの知名度の低さだ。残念ながら地域の企業に知られていない。そこで経済産業省の経済産業局にNEDOのデスクを置かせてもらう。第1号は近畿経済産業局になる。NEDOの職員が常駐して支援メニューを案内する。支援を求める企業を待つのでなく、こちらから出かけていく」

「スタートアップへは長期的な支援を広げている。新技術の市場を絞り込む事業化調査や実用化開発の段階、主要市場を定めて生産技術を開発する段階、そして量産化の実証段階まで支援する。同時に支援が長期化するため、注意深く見ていく必要があると感じている。(個人的に)スタートアップには頑張ってほしい一方で、設立後何年まではスタートアップと言えるのかという問題もある。また、ディープテック・スタートアップは技術開発に注力し、マーケットが見えていないことがある。スタートアップピッチイベントなどへ参加してほしい。海外も含めて広く市場に目を向けてほしい」

-機構改革では海外展開支援強化も盛り込まれました。
 「海外のニーズの中でもペイン(痛み)を理解している人材が重要だ。スタートアップとこうした人材をマッチングする必要がある。NEDOとしては海外の連携機関と中長期的に関係を深めていく必要がある。やはり相手の国のペインを理解することが基本だろう。痛みが分かれば解決策を持つ企業をマッチングできる。科学技術外交が政策としてトップダウンで動いていることも心強い。我々のボトムアップの活動と一体となって成果を出していきたい」

-文部科学省が博士人材を3倍に増やす計画を掲げています。博士人材からみたNEDOのキャリアの魅力はありますか。
 「すでにたくさんの博士人材が活躍している。NEDOにはプロジェクトマネジメントだけでなく、さまざまな役割がある。例えばシンクタンク部門では技術戦略の調査やマーケット分析などを担う専門家が活躍している。さまざまな民間企業出身者と机を並べることも魅力の一つだ。一つの企業では得られない視点が備わり、人脈が広がる。経産省を中心に国の政策に携われ、大学や研究機関との接点もできる」

-某化学大手は研究者をマネージャーに上げる前にNEDOへ出向させ、視野を広げさせています。とがった人材が、とがったまま丸くなるそうです。人材戦略の一部としてNEDOを活用する企業は増えますか。
 「そうした活用が広がればと思う。多様な視点を持つ人材をそろえることはNEDOにとって重要だ」

-NEDOは日本のイノベーションエコシステムの要です。残りの4年間で実現したい目標はありますか。
 「私自身には大きな野心はない。だが日本の産業や政策、国際環境が大きく変わっていく中でNEDOを永続する組織として残していく必要がある。これが簡単ではないと思っている。機構改革はその一つだ。一人ひとりの仕事は付加価値が高い業務にシフトし、生産性を高める。NEDOプロジェクトに参加する企業が手間やハードルを意識せずにプロジェクトを全力で推進できる。これが日本の産業を強くすることにつながると信じている」

日刊工業新聞 2024年07月08日の記事に加筆
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
自律分散型組織が機能するかは現場のリーダーにかかっている。100人以上になるリーダーの育成が急務だ。同時に自律分散型は個人がキャリアを磨くには最適な形態だ。企業や大学、官庁からの出向者は人脈を広げ、プレッシャーへの耐力や現場感覚が養われるだろう。企業とともに挑戦する人材が求められている。

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