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医療で人流呼ぶ、大和ハウス・大成建設などが新さっぽろ駅周辺で進める再開発プロの全容

医療で人流呼ぶ、大和ハウス・大成建設などが新さっぽろ駅周辺で進める再開発プロの全容

駅に直結した屋内型空中歩廊「アクティブリンク」

高齢化対応、街づくりに工夫

医療や教育を中核とする新たな街づくりが札幌市厚別区で進んでいる。大和ハウス工業大成建設などが手がけた新さっぽろ駅周辺の再開発プロジェクト「マールク新さっぽろ」だ。商業施設やオフィスに加え、複数の医療機関を集積させることで人の流れを呼び込み、街のにぎわい創出を目指している。少子高齢化の進行や人手不足といった地方都市の課題解決のヒントを探る場としても効果が期待されている。(編集委員・古谷一樹)

マールク新さっぽろはJR千歳線「新札幌」駅や地下鉄東西線「新さっぽろ」駅に近く、医療施設やマンション、ホテル、商業施設などからなるI街区と、大学や看護の専門学校があるG街区で構成。両街区の連携によって街全体の活性化を図ろうとしている。

「生活に密着しながらも目的を持っている街」。設計・施工を担った大成建設の松田祐晴医療・医薬営業本部医療施設計画部営業部長が説明するように、I街区の特徴は商業施設を中心とする街づくりではなく、複数の専門病院を集積させた点にある。

駅周辺には、三つの専門病院のほか、クリニックなどが入居する複合テナントビル「D―スクエア新さっぽろ」が連なる。これらを一つの総合病院のように位置付け、人の流れを創出する効果を見込んでいる。

「マールク新さっぽろ」のI街区

新さっぽろ脳神経外科病院など二つの病院では、最先端の技術や製品を使った実験的な試みを行っている。その一つが大成建設によるロボット制御システム「ロボハブ」の導入。人手不足に対応し、薬剤や検体の搬送などの業務にロボットを活用した場合の効果を検証していく。

一方、病院以外でひときわ目を引くのが、駅に直結した楕円(だえん)形の屋内型空中歩廊「アクティブリンク」。各医療機関やホテル、商業施設をつなぐシンボル的な建築物で、季節や天気に左右されずにこれらの施設を行き来できる。

またD―スクエア新さっぽろ1階には、低炭素で災害に強い街づくりを狙いに「エネルギーセンター」を設置。I街区全体に電気と熱エネルギーを集中的に供給している。

札幌市厚別区は、高齢化が進み駅周辺の人の滞留が少ないのが長年の課題だった。「住む・遊ぶ」といった目的だけでなく、他の地域から人を呼び込める機能を持つ環境が整ったことにより、中長期的には街全体のにぎわい創出効果を見込んでいる。

地方では少子高齢化の進行に伴って人口減少に歯止めがかからない地域が数多い。マールク新さっぽろに対する関心を裏付けるように病院や自治体の関係者からの問い合わせが相次いでいることを踏まえ、「見学を受け入れていく」(松田部長)考えだ。

日刊工業新聞 2024年07月09日

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