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不登校リスク早期予測、AI活用の仕組み作り進む

不登校リスク早期予測、AI活用の仕組み作り進む

都内のセミナーで事例を発表する戸田市教育委員会の片境次長

人工知能(AI)を使って不登校になる可能性のある児童や生徒を予測したり、さまざまなデータを連携してヤングケアラーや貧困、虐待などの可能性がある子どもを抽出したりする仕組みづくりが進んでいる。困難な環境に直面し、支援が必要な子どもや家庭を可視化・早期発見するのが狙いだ。実際に支援につながった事例も出ている。(楠由萌)

こども家庭庁の「こどもデータ連携実証事業」として採択された事業では、内田洋行が埼玉県戸田市、神奈川県開成町とそれぞれ共同で構築・運用している。このうち戸田市の不登校を予測するAIは、学力テストの結果や出欠状況、いじめに関する記録、学校検診・乳幼児検診結果など、多様なデータを一元化。過去のデータを用いた機械学習により不登校予測モデルを構築し、AIが不登校リスクスコアを算出する。

その結果、不登校リスクが高いと判定された児童・生徒の割合は全体で1割弱となり、高リスクと判定された児童・生徒は、ほとんどが学校で注意が必要だと考えていた児童・生徒と同じだった。参加校にアンケートを実施したところ、8割程度が「信頼できる」と回答した。

戸田市教育委員会の片境俊貴次長兼教育政策室長は「AIによる不登校予測の精度は高い」と強調。その上で「日々更新される鮮度の高いデータと連携することで、精度の向上や早期発見につなげたい」と語る。

一方、神奈川県開成町が構築したのは「こども見守りシステム」。開成町こども課の木村啓章こども支援班長は「転入世帯が増加し、家庭環境が分からない家庭が増えている」ことが背景だと語る。

住民記録や児童手当、生活保護受給、虐待や妊産婦などの相談の有無といった自治体が持つさまざまなデータを連携させ、貧困、虐待、ひきこもりなどの可能性がある子どもや家庭を抽出する。実際に「貧困」と判定された世帯から給付金の申請・受給につながった例もあるという。

課題はデータ管理のシステム化だ。教育現場は依然として紙での管理が主流で、片境次長は「データ化に約1年かかった」という。「個人情報の利用に対して理解を得ることが大変だった」と振り返るのは木村班長。住民への丁寧な説明と、厳重な個人情報管理に力を入れる。

さらに内田洋行ICT基盤システム開発部の小森智子次長は、デジタルデータが整理されておらず、活用できる状態にない点を課題に挙げ「分析には相当数のデータが必要」と指摘する。データの自動連携などにより、無理なくデータを蓄積できる仕組みづくりが求められる。

日刊工業新聞 2024年07月05日

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