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踊り場「ロボット市場」飛躍なるか、勝負を分けるカギ

踊り場「ロボット市場」飛躍なるか、勝負を分けるカギ

塗装のデモをするファナックの防爆協働ロボ

日本のロボット産業が雌伏の時を迎えている。モノづくりの現場は慢性的な人手不足に陥り、潜在的な自動化のニーズは高水準ながらも、設備投資の抑制や中国経済の失速が足を引っ張り、足元の受注は振るわない。調整局面が続く中、ロボット関連企業は次なる飛躍に向けて、新技術の開発や新製品の投入でてこ入れを図っている。(編集委員・江刈内雅史)

4日に愛知県国際展示場(愛知県常滑市)で開幕した展示会「ロボットテクノロジージャパン2024」(ニュースダイジェスト社主催、愛知県機械工具商業協同組合共催)。ファナックのブースでは塗装現場で利用できる世界初の防爆協働ロボットをはじめ、多様な協働ロボットが展示され、来場者の注目を集めた。100ボルト電源で使えたり、磁石でテーブルに固定できたりする「手軽さをテーマ」(安部健一郎常務執行役員)にして、協働ロボットの拡販を狙う。

機械工具商社の井高(名古屋市中区)も導入がしやすい協働ロボットの販売を推進。取り扱うのはドイツのスタートアップであるニューラ・ロボティクス製の人工知能(AI)搭載の協業ロボット「マイラ」だ。3次元(3D)ビジョンセンサーによる物体認識機能とAIにより対話形式でのティーチングで簡単に設置・運用できる利点を訴求し、自動化ニーズを掘り起こしている。

人だかりができた安川電機の「i3メカトロニクス」のデモ

安川電機では生産現場の複数のロボットが作業によって場所やツールを変えながら、3種類の製品の組み立てをする自動化コンセプト「i3(アイキューブ)メカトロニクス」のデモンストレーションに人だかりができていた。多品種少量生産のような「今まで省人化できなかった所を省人化できる」(ロボット事業部)このコンセプトを武器に、製造現場の自動化の領域を広げようとしている。

研磨関連製品の製造販売を手がける柳瀬(兵庫県丹波市)は、熟練の技を要する研磨作業をロボットに置き換える提案を進める。同社が販売するオーストリアのファーロボティクス製のエンドエフェクターは、ロボットに装着して研磨加工中に必要な微妙な力加減を自動で調整する。研磨の現場も人材不足が顕在化している中、「徐々に実績が伸びている」(森清隆営業1部FT推進部部長)という。

ロボット商社のダイドー(名古屋市中村区)は生産現場で部品を入れる箱を自律移動ロボット(AMR)が搬送するデモを実演。こうした工場内物流の自動化案件が受注につながってきており、「人を集めにくい中で、ニーズが高まっていく」(営業本部営業推進部)と見て、提案を積極化している。

日本ロボット工業会副会長を務める太田裕之ヤマハ発動機上席執行役員はロボット市況について「足元の景況感は芳しくはない状態が続いている」とした上で、「さまざまな分野で深刻な人手不足が継続しており、自動化対応の重要性は増している」と捉える。

顧客のニーズを捉えた提案をいかにするかが、踊り場にあるロボット市場での勝負を分けるカギといえそうだ。

日刊工業新聞 2024年07月05日

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