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「規模拡大しなければ運賃交渉難しい」…国内6万社の物流業界、今後も再編続く

「規模拡大しなければ運賃交渉難しい」…国内6万社の物流業界、今後も再編続く

SGHDはC&FロジHDへのTOBを決めた(SGHDの松本秀一社長㊨とC&FロジHDの綾宏将社長)

物流業界でM&A(合併・買収)が活発化している。物流大手のロジスティード(旧日立物流)やSGホールディングス(HD)、セイノーHDが相次いで大型買収を決め、中小企業のM&Aも増加している。拠点や車両を拡充して「物流の2024年問題」に対応する狙いに加え、需要低迷やコスト上昇による経営環境の悪化がM&Aを加速させている。(梶原洵子)

「C&FロジHDとは相互に補完領域が大きく、国内屈指のコールドチェーンを提供できる」。SGHDの松本秀一社長は5月末に開いた会見で、C&FロジHDへのTOB(株式公開買い付け)の狙いを語った。AZ―COM丸和HDによるC&FロジHDへの同意なきTOBを受け、SGHDは協業関係にあるC&FロジHDへのTOBを決めた。

SGHDは6月3日からTOBを開始。買い付け代金は1200億円を超える。AZ―COM丸和HDのTOBは不成立となったが、日本では珍しい同意なきTOBは変化に迫られる物流業界を表している。

ロジスティードは1000億円超を投じ8月中旬頃にアルプス物流へのTOBを開始する。セイノーHDは572億円で三菱電機の物流子会社の株式の3分の2を取得する。

M&A仲介国内最大手の日本M&Aセンター(東京都千代田区)の志賀俊太氏は、「働き方改革関連法が施行された19年度以降、物流業界のM&Aは増加している」と話す。23年度に公表されたM&A件数は14―18年度平均の約2倍の104件となった。

日本M&Aセンターは中小同士の案件を中心に手がけており、23年度に携わったのは26件。公表されているM&A件数と同様に増加傾向だ。同社が関わるものの大半は非公表案件といい、水面下では公表値より多くのM&Aが実施されている。

売却希望も買収希望も増えているが、「21年度までとそれ以降は買収検討理由が変わってきた」(志賀氏)。21年度までは24年からの残業時間の上限規制で長距離輸送が難しくなるため、M&Aで中継拠点などの獲得を図る企業が多かった。

一方、現在は「規模を拡大しなければ運賃交渉が難しい」(同)のが大きな理由だ。コロナ禍の物量減少や燃料費高騰、あらゆるコストの上昇により経営環境が悪化している。東京商工リサーチによると、この数年、運送業者の倒産件数は増加している。23年は過去10年間で最多の328件を記録した。M&Aの増加はこれと大きく関係している。

国内の運送業者は約6万社と非常に多いため、「今後も業界再編は続く。大手も中小も同じだ。大手企業は下請けの管理が求められるようになるため、これを機に下請けの買収を検討する流れもあるだろう」(同)とみる。どこまで再編が進むかが注目される。

日刊工業新聞 2024年07月02日

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