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「鴻海・シャープ連合」の勝機はどこだ!#01ディスプレーの2本柱は再生の象徴

「競争の土俵が変わるタイミングに来ている」(鴻海会長)
「鴻海・シャープ連合」の勝機はどこだ!#01ディスプレーの2本柱は再生の象徴

IGZO液晶パネルを使った「フリーフォームディスプレイ」

 シャープは電子機器受託生産の世界最大手、台湾・鴻海精密工業の傘下で再建を目指すことになった。モノのインターネット(IoT)、家電、電子部品などシャープの既存事業にはシナジーを期待できる分野が多い。特に過剰投資がたたり、外部への切り離しも検討されたディスプレーパネルは鴻海が最も重視する。日台連合が描くパネル戦略はシャープ再生の鍵を握るといって過言ではない。

 「ディスプレー産業は競争の土俵が変わるタイミングに来ている」。2日、シャープと買収契約後に会見した鴻海の郭台銘会長はこう切り出した。シャープと鴻海は有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルを18年までに量産化して米アップルの新型アイフォーン向け受注を狙う計画だ。

 アップルのスマートフォンを組み立てる鴻海は、アップルに液晶パネルの納入実績を持っているシャープを買収してサプライヤーとしての地位を向上できる。シャープを通じて有機ELパネルを供給することは、アップルから与えられた課題でもある。

 ただ、アップルはスマホで競合する韓国サムスン電子の有機ELパネルを17年から一部機種に採用するとみられるほか、時計型ウエアラブル端末には韓国LGディスプレー製をすでに採用済み。

 スマホなど携帯型端末のトレンドリーダーであるアップルが有機ELパネルの採用を広げれば、他の端末メーカーでも液晶からの置き換えが急速に進む可能性がある。シャープの有機ELパネル量産が市場の拡大期に間に合わなければ、上位メーカーの生産能力を補う調整弁の地位しか得られなくなる。

「有機ELよりもコストに優れるIGZOを押したい」(鴻海会長)


 そこで郭鴻海会長が考えるもうひとつの戦略はシャープが量産し、アップルの最新タブレット型端末に採用された液晶パネル「IGZO」の拡大だ。郭会長は「OLED(有機EL)よりもコストに優れるIGZOを押したい」との方針。

 過去のベータとVHSのビデオ規格競争を引き合いに「技術よりビジネスで勝敗が決まることもある」として、グローバルに広がる販路を生かし、まずIGZOを伸ばす考えだ。

 シャープは今後、IGZOを生産する亀山工場に600億円を投資して、中型液晶の高精細化や生産能力増強に充てる計画。IGZOは円形などさまざまな形をつくれる「フリーフォームディスプレイ」など自動車や産業分野向けの製品開発も進んでいる。

 カメラデバイスと組み合わせてシステム提案できれば安定受注につながる可能性もある。ただ、IGZOはまだシャープしか量産しておらず、採用メーカーが複数調達先を確保できないという課題もある。

 有機ELとIGZO。シャープ・鴻海の日台連合が進めるディスプレーパネル戦略の2本柱は、有機ELで先行する韓国勢、最新鋭の液晶工場を次々立ち上げる中国勢、ジャパンディスプレイとJOLEDの日本勢との競争に打ち勝つことができるのか。シャープ再生の最大の鍵となる。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
IGZOは鴻海のサプライチェーンに乗せることでかなりのスケールが見込めるはず。利益が上がるかは未知数だが。この2,3年にエレクトロニクス産業のビジネス環境は大きく変わったとはいえ、郭会長の根底には「対サムスン」という意識がある。

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