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共通は「防衛」伸長…三菱重工・川重・IHI、明確になってきた事業ポートフォリオ

共通は「防衛」伸長…三菱重工・川重・IHI、明確になってきた事業ポートフォリオ

三菱重工

3大重工メーカーの事業ポートフォリオが明確になってきた。政府の防衛予算増額に伴い関連事業が伸長するのは共通で、個別には三菱重工業は火力発電向けガスタービンや原子力などに、川崎重工業は2輪車・4輪バギーや航空機関連などに、IHIは民間航空機エンジン、燃料アンモニアなどに経営資源を重点配分する。多角経営によるコングロマリット・ディスカウントを指摘する向きもあったが、課題事業の整理に一定のめどを付け、成長のアクセルを踏む。(八家宏太)

2026年度に売上高で23年度比20%増の5兆7000億円以上に、事業利益で同60%増の4500億円以上の目標を掲げる三菱重工。「大きく受注を伸ばしたガスタービン、原子力、防衛は1兆円規模の大幅な売り上げ拡大が見込まれる。リソースを集中し、確実に遂行する」と泉沢清次社長は強調する。24―26年度までの3年間で総額1兆2000億円の投資を計画、うち半分強をこれら重点領域や水素など将来伸びるエネルギー事業に費やす。

三菱重工はこれまでに国産旅客機開発からの撤退や造船事業の縮小などの構造改革を断行し、23年度までの前3カ年中期経営計画期間中に収益力を大幅に回復した。今後は「重点を置く事業ポートフォリオをしっかりと見直し、成長性を高める」(泉沢社長)方針だ。

一方、IHIは「中長期では成長・育成事業が経営を支える。大胆に人財やキャッシュをシフトすることで持続成長につなげる」と井手博社長は力を込める。民間エンジン、防衛・宇宙事業を成長ドライバーとし、30年以降を見据えて燃料アンモニアバリューチェーン事業を長期目線で育成する。保守サービスなど注力してきたライフサイクルビジネスが各事業領域で定着してきたが、「質的な変化をしていかなければならない」(同)。今後も事業再編を含め「毎年100億円程度の構造改革費用を念頭に入れておく」(同)。

川重は30年に営業利益率10%を目指す。24年度の事業利益見通しは1300億円(利益率5・8%)と過去最高を更新する見通しだが「まだスタートポイント。浮かれずしっかり成長に結びつける」(橋本康彦社長)。

成長をけん引するのは2輪車・4輪バギーの「パワースポーツ&エンジン(PS&E)」と「航空宇宙システム」だ。PS&Eではメキシコ新工場を稼働し、四輪バギーの生産能力を倍増。これまで需要に供給が追いついていなかったという。24年度はPS&Eセグメントの売上高が前年度比21%増の7200億円に増える見通し。航空宇宙セグメントの受注環境も良好。24年度の受注高は同8%増の7500億円を見込む。


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日刊工業新聞 2024年06月25日

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