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医工連携で国際卓越大へ、東京科学大の初代理事長が強調した計画

医工連携で国際卓越大へ、東京科学大の初代理事長が強調した計画

会見する大竹氏

東京医科歯科大学と東京工業大学は24日、両大学の統合で10月1日に発足する東京科学大学の初代理事長に内定した大竹尚登氏(東工大科学技術創成研究院長)の会見を開いた。大竹氏は東京医科歯科大が現在生きている人の命に関わり、東工大は数十年先の産業の種を育てている事を念頭に「今も未来も大切に、科学の力を信じて日本のためになる大学へ向かう」と抱負を述べた。また国際卓越研究大学の2回目の公募には、1大学で理事長・学長という特徴的なガバナンス(統治)と、医歯学・理工学の分野融合研究の卓越性で応募する計画を強調した。

経営の理事長と教学の学長(大学総括理事)を置く国立大学は1法人複数大学でみられるが、1法人1大学では初めてだ。大竹氏は文部科学相の承認などを経て、新大学の学長に田中雄二郎東京医科歯科大学長を迎えたいとした。ファイナンス、医療、統合融和のチーフオフィサー(理事など)の計5人がガバナンスの中心になる。さらに執行部、部局長、事務部長らも加わって計画や目標を共有する「科学大戦略会議」(仮称)を新設する。

研究で目玉となる医工連携では大学病院を中核に位置付けた。また、基礎研究推進と融合・新分野形成の「総合研究院」、未来社会の変容につなげる「未来社会創成研究院」、大型の産学連携や卓越大学院プログラムを集約する「新産業創成研究院」を設置する。

大竹氏は好きな言葉に「三人行えば必ず我が師あり」を挙げた。統合準備でも実感した異なる考え方があることの魅力を、新大学で生かそうとしている。

日刊工業新聞 2024年06月25日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「新大学は理事長・学長型にして、トップを両大学から出す」というのは、企業の統合のたすき掛けと似て、自然な形だと思っていました。候補3人の顔ぶれで収まりがよさそうなのは、年長で経験豊富な田中東京医科歯科大学長が理事長に、10歳ほど年下で部局長(理事より下に位置します)の大竹東工大科学技術創成研究院長が学長に、就く形だったでしょうか。それが結果として逆になったのですから、両者とも相当な挑戦をすることになりそうです。例えば病院業務は、田中先生でなく大竹先生がみます。学生数で医歯学の3倍いる理工学の教育を、担当するのは田中先生です。ですが、「これまで通り、医歯学と理工学それぞれを、手慣れた人が別々にみる」のでは、学内融和は難しいかもしれません。今回の組み合わせによって、新大学はより優れたものになるはず、と期待しています。

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