回転軸・回転数が見て分かる…近畿大が開発した投球練習ボールの仕組み
近畿大学の渡辺達也学部生(研究当時)と松野孝博講師は、回転軸と回転数が見て分かる投球練習用ボールを開発した。野球の硬式球に発光ダイオード(LED)を1周配置する。LEDの色で大まかな回転数、光の軌跡で回転方向と軸が分かる。計測結果を表示するタブレット端末などは不要で、1人での練習で使いやすい。大学やアマチュア野球の練習に提案していく。
3次元(3D)プリンターで外殻を成形しLEDやセンサー、電池などを埋め込んで牛革で覆い縫い合わせた。重さは145グラムで野球規則にのっとる。LEDは赤橙(だいだい)緑青の4色で、回転速度が毎分300―600回転では赤、毎分600―900回転は橙、毎分900―1200回転は緑、毎分1200回転以上では青に光る。投げると回転方向に球を1周するように光の軌跡ができる。
回転数は加速度やジャイロセンサーの値から推計する。実験では高速カメラで撮影しフレーム数を数えて妥当性を確かめた。野球部員が投げて重心のブレなどがないことを確認している。3Dプリンターでは熱可塑性のポリウレタンエラストマーを採用した。靱性(じんせい)が高く、衝撃吸収性もある。投げ込みを重ねても破損しなかった。
アマチュア野球などに手軽な練習球として提案する。プロが扱う精密な計測球は販売されているが、スマートフォンやタブレット端末などに結果を表示する。投球者と捕球者に加えて端末を確認する人を置くか、ディスプレーに表示する必要があった。1人で投げて練習する場面では投げた球がその場で光ると狙い通りに投げられたか判断しやすい。
日刊工業新聞 2024年06月21日