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三井物産・三菱商事・双日…商社、インド開拓に商機あり

三井物産・三菱商事・双日…商社、インド開拓に商機あり

三井物産はインドの金属リサイクル大手MTCを持分法適用会社にする(グジャラート州)

大手商社がインド市場の開拓を活発化している。三井物産は金属リサイクルの現地大手MTCに出資し、金属需要が膨らむインフラや自動車向けなどに再生原料を供給して低炭素化ニーズを取り込む。双日はインドで開発が進む再生可能エネルギーを使ってグリーンアンモニアを生産し、日本に輸出する。約14億人の人口が支える内需や広大な国土を生かしたエネルギーの供給力は、成長分野の商機拡大へとつながっている。(編集委員・田中明夫)

三井物産は2025年3月期中にもMTCに出資して同社を持分法適用会社にする。出資額は200億円程度とみられる。

MTCはインド全土に30カ所以上のリサイクル拠点を持ち、鉄や非鉄金属スクラップの集荷から選別、加工、販売までを一貫して手がける。売上高は年間10億ドル(約1570億円)以上で、鉄スクラップの取扱量は年間約190万トンに上る。

三井物産の事業開発力や産業ネットワークを生かした協業先の確保、MTCの取締役としての人員派遣を通じて同社の成長を後押しする。廃建材などからの金属回収のほか、将来的には蓄電池を含む自動車リサイクル事業への本格参入を目指す。

三菱商事はインドの自動車販売業者TVSビークル・モビリティ・ソリューションに32%出資することに合意し、23年の新車販売台数が世界3位の約500万台に上る同国市場を開拓する。ホンダやインドメーカーなどの自動車を販売するTVSグループの基盤を生かしつつ、電気自動車(EV)を含むリース事業やデジタル技術を活用した保険サービスなども一貫して展開する。

双日はシンガポールのコングロマリット(複合企業)であるセムコープ・インダストリーズなどと共同で20年代後半からインドでグリーンアンモニアを生産し、日本に年間20万トンの輸出を予定する。インド政府が30年までに電源の50%まで引き上げる計画の再生エネを利用するほか、「セムコープが保有する現地でのプロジェクト開発・運営の知見やリソースを活用することで、価格競争力の高いグリーンアンモニアの製造が期待できる」(双日)とする。

一方、発展途上のインド市場は冷凍・冷蔵の物流インフラなどが脆弱なほか、州ごとに制度が異なるなど「課題に直面することが多く、人口が増えるからといって武器を持たずに入っても成功は難しい」(現地日系商社)という。潜在力の大きい成長市場の開拓には、現地の優良な協業先と連携することがカギとなりそうだ。

日刊工業新聞 2024年06月21日

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