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事務機メーカー、新規事業でもパイを奪い合い?

産業印刷、監視カメラ、FAに各社熱視線
事務機メーカー、新規事業でもパイを奪い合い?

リコーの立体印刷技術で再現したゴッホの自画像

 事務機メーカーの新規事業領域での競争が激化してきた。各社の熱視線が集まるのは商業・産業用印刷、監視カメラ、FA(工場自動化)の3分野。この1―2年は、特にキヤノンリコー、コニカミノルタがM&A(買収・合併)を含めた積極的な動きをみせている。今後の課題はITサービスなど、製品以外での差別化をどう進めるか。既存の事務機市場同様、新市場でも各社の攻防が激しくなりそうだ。

1本足から脱却


 各社は収益の半分以上を占める事務機事業1本足からの脱却を掲げる。その動きが加速し始めたのは、2014年以降だ。キヤノンは海外の監視カメラ関連企業を相次ぎ買収。ロボット向けの3次元マシンビジョン事業にも参入し、製品を拡充するなどして事業を育成している。

 リコーも布地などへの印刷機を手がける米アナジェットを買収したほか、ロボットビジョンへの参入などFAシステムの製品化を強化。また3月29日には絵の具の盛り上がりなど、絵画を立体的に高精細に複製する技術を開発したと発表した。

 10月から東京・上野で開かれる「デトロイト美術館展」で、技術を使った複製絵画を発売する予定だ。同様の技術はキヤノンも15年に発表。両社は壁紙や建材などへの展開を視野に、事業化を進める。

付加価値高めて


 コニカミノルタも検査システムメーカーの米ラディアントビジョンシステムズに加え、3月29日にはネットワークカメラシステムを手がける独モボティックスの買収を発表。監視カメラ市場に参入する。

 各社の考えはおおむね共通だ。複合機で培ってきた印刷・光学・搬送技術などを、技術との相性が良く今後の成長が見込める市場へ応用展開するのが狙い。それが産業印刷やFA、監視カメラという訳だ。

 各社が力を入れる新規領域だが、同業他社の参入が増えれば、製品では差別化しにくくなる。既存の事務機市場はハードウエアでの差別化が難しくなり、価格競争に陥っている。各社が期待をかける新市場でも、同様のことが起こる可能性がある。
日刊工業新聞2016年3月31日 電機面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
新製品などこれまでの事業展開で横並びの印象が強い事務機業界。それが新規事業分野でも見られてきた。同業他社だけでなく、すでにその分野で市場展開している既存の会社とも競合する中、自社シーズだけでは差別化できなくなるのは明白。今後はベンチャーの取り込みやオープンイノベーション、M&Aがさらに活発になるだろう。経営スピードの加速も求められる。

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