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地域産学連携の新手法…静岡県大とテクノスルガ・ラボ「公募型の共同研究」が注目の理由

地域産学連携の新手法…静岡県大とテクノスルガ・ラボ「公募型の共同研究」が注目の理由

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静岡県立大学と微生物受託分析のテクノスルガ・ラボ(静岡市清水区、望月淳社長)は、公募した同大若手研究者のテーマから共同研究3件を始めた。同社の研究装置や分析サービスが使え、進展した場合は地域のモノづくり企業での事業化につなげる。大型の研究資金獲得を狙うベテラン研究者向けと異なる、地域産学連携の新手法として注目される。

新設計の公募型共同研究で6人が応募、書類選考とプレゼンテーションで採択した。「敗血症時感染菌による不整脈のメカニズム解明」は薬学部・清水聡史助教による。多臓器不全を引き起こし死亡率の高い敗血症の不整脈で、心臓電気活動に影響を与える原因菌の同定など手がける。

「静岡県産農作物を用いた口臭ケア食品の開発」は同じく刀坂泰史講師のテーマで、県農産物による口腔(くう)内細菌に対する有効成分をみる。「黄色ブドウ球菌の毒性発現に対する皮膚常在菌の同定とその代謝物の影響」は食品栄養科学部・島村裕子助教の研究だ。アトピー性皮膚炎に関わる黄色ブドウ球菌に対し、病原因子を抑制する常在菌同定や菌体外代謝物の解析を行う。

4月から1年間(延長あり)。共同研究費は1件75万円で、これに同社の共同分担費として解析サービスなど150万円相当の利用が可能だ。テクノスルガ・ラボの望月社長は「大学とのつながりは全国であるが、地域の大学の知見と当社の技術力を生かして地域産業を興したい」としている。

大学の研究資金は、産学連携や国のプロジェクト獲得の実績がある年長者に比べ、若手で不足している。遺伝子解析装置や微生物培養装置など同社の機器利用は、若手の後押しに期待できそうだ。

日刊工業新聞 2024年05月24日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
予算が豊富な大手企業と異なり、中堅企業の産学・地域連携は悩ましいことが少なくありません。その点、この取り組みはお薦めです! 若手研究者向けなので共同研究費が小ぶりですみますし、企業側の現物供与(今回は解析サービスの利用)で支援を充実させられます。同社はメーカーではありませんが、製品の実用化が見えてくれば地域の他のモノづくり企業と一緒になって…という設計も好ましいもの。他の地方・中小規模の大学や企業も参考にしてみてください。

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