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「ペロブスカイト太陽電池」フィルム型の重要素材、バリアフィルムに求められる「両立」

「ペロブスカイト太陽電池」素材を追う #03 バリアフィルム
「ペロブスカイト太陽電池」フィルム型の重要素材、バリアフィルムに求められる「両立」

麗光のバリアフィルム(麗光提供)

次世代太陽電池の本命と期待される「ペロブスカイト太陽電池」の性能はそれを構成する素材の力も左右する。ペロブスカイト太陽電池をめぐる素材の動向を追う。

ペロブスカイト太陽電池は基板にフィルムかガラスを据える。フィルムを用いると、曲げられる太陽電池が実現できるが、水分を通してしまうため発電素子の劣化要因になってしまう。そこで封止材と共に用いて、発電素子を保護するバリアフィルムの性能が重要になる。一方、バリアフィルムは高価で、ペロブスカイト太陽電池モジュールコストのうち3割以上を占めるとされる。性能とコストはトレードオフの部分があり、実用性の観点では高い保護性能と低コストを両立するバランスが要求される。

麗光(京都市右京区)はフィルムに薄膜を加工するための真空蒸着やコーティングで高い技術力を持つ。その技術を生かし、高い保護性能を持つ太陽電池用バリアフィルムを2022年に開発した。ペロブスカイト太陽電池用に求められる保護性能として、水蒸気透過率は1日当たり0.001g/㎡以下が目安とされるが、それを大きく上回る1日当たり0.00001g/㎡を実現した。

同社は有機ELが登場し、ディスプレイのフレキシブル化が注目された00年代に電子デバイス向けバリアフィルムの研究開発を始めた。ガス状の気体原料を送り込み、熱やプラズマ、光などのエネルギーを与えて化学反応を促して薄膜を基板表面に堆積させるCVD法(化学気相成長法)により、曲げに強いバリアフィルムを実現して15年に事業化した。現在は電子ペーパータグ用途を中心に、台湾や中国のメーカーに展開しており、同用途で世界シェア30%程度を占めるという。

太陽電池用はこのバリアフィルムを改良し、屋外でも高い保護性能を発揮するように開発した。一般にバリアフィルムは温度40℃湿度90%の環境下における水蒸気透過率で耐久性を評価するが、麗光の太陽電池用バリアフィルムは温度85%湿度85℃の厳しい環境下で優れた水蒸気透過率を確認した。麗光の幾原志郎取締役は「ペロブスカイト太陽電池を保護する上で十分な性能を実現している」と胸を張る。一方、課題はやはり「いかにコストを下げていくか」。一定の保護性能を持ちつつ、価格を抑えられる製品設計を模索している。

東レは、水蒸気透過率について1日当たり0.001g/㎡のバリア性能を確保しつつ、生産速度を速めて大幅に低コスト化したバリアフィルムを開発したと22年に発表した。独自の膜設計や膜の形成技術を追求して実現した。ペロブスカイト太陽電池も展開先として想定しており、実用化に向けて研究開発を続けているという。

このほか、リンテックも独自の表面改質技術などを生かしたバリアフィルムを開発しており、ペロブスカイト太陽電池への展開を目指す。

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