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アパレル「一つの時代」終わる…令和の20代に“ハマらなかった”ブランドの倒産劇

2023年のアパレル卸・小売りの倒産件数は前年比30・9ポイント増の195件で、負債規模トップとなったレイ・カズン(10月31日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請)。同社の婦人服ブランドは、1994年10月設立のRCコーポレーションが前身。「Ray Cassin(レイカズン)」「DOUBLE NAME(ダブルネーム)」などの自社ブランドを手がけ、ラフォーレ原宿や渋谷パルコに出店。12年9月期には約50店舗を展開し、年間売上高約55億円を計上した。

一方、ブランド価値が高まった傍らで経営権の承継を検討していた。その後、プライベート・エクイティファンドのアドバンテッジパートナーズへの売却が決まり、13年10月に会社を分割、受け皿会社の現レイ・カズンに事業が承継された。金融機関の融資を受けながら店舗を出店し、16年には60店舗を突破、19年9月期の売上高は約71億5700万円まで拡大した。

しかし、新型コロナの感染拡大による出店ビルの休業などで20年9月期の売上高は前年比24%減、営業段階から損失を計上した。この間、金融機関主導で再生を進め、23年3月にゴードン・ブラザーズ・ジャパン(以下、GBJ)が同社の株式を取得したが、半年後には資金繰りが悪化。実は、GBJが支援介入した時点で数億円の税金を滞納していたことが足かせとなり、結局10月31日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。その後、事業については、分割して複数の企業に譲渡し、今後、法人としては清算方針となっている。

かつて同社のブランドが流行した時のメーンターゲットだった“平成の20代”は、今やアラフォーで好みは変化した。“令和の20―30代”に聞くと「価格面でもデザインでも最近の同社ブランドは“引き”がなかった」という。多種多様な趣向にハマる独自性や商品力が足りなかったのだろうか。ブランドというよりも、「一つの時代が終わった」と感じる仕入れ先は多い。
(帝国データバンク情報統括部)

日刊工業新聞 2024年05月23日

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