光強度1万倍増強…東北大、ナノサイズのパラボラアンテナ
東北大学の押切友也准教授と中川勝教授らは、ナノメートル(ナノは10億分の1)寸法のパラボラ(おわん)型アンテナを作製し、光強度を1万倍増強できることを電磁界シミュレーションで明らかにした。太陽光などの弱い光を集光することで、これまで難しかった光化学反応や人工光合成反応などへの適用が期待される。
研究チームは一般的な放送衛星(BS)からの受信用アンテナの100万分の1に相当する、金属反射面と半導体から構成される微小なパラボラ型光ナノ共振器を開発。これで可視光を捕集し、それと組み合わせた金属ナノ粒子に集めることで光強度を高められることを確かめた。
局所的に光の強度を増大させると、生成される電子と正孔の数も増える。そのため、従来は困難だった窒素の還元によるアンモニアの製造や、二酸化炭素(CO2)の還元による炭素化合物の製造など、多電子反応を進める新しい光化学反応場として光ナノ共振器が活用できる可能性がある。
持続可能な社会の実現に向け、太陽光エネルギーを化学資源に変換する人工光合成の実用化が待たれる。だが、太陽光が単位時間当たりに単位面積を通過する光子の数であるエネルギー密度は低く、複雑な反応の実現は難しいとされていた。
科学誌ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリーC電子版に掲載された。
日刊工業新聞 2024年05月21日