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ジェイテクト・日本精工・NTN…軸受3社の通期見通し、営業益改善が続く背景

円安頼らぬ体質強化不可欠

軸受メーカー3社の2025年3月期は為替の歴史的な円安と自動車向けの伸びで、売上高と営業利益の改善が続きそうだ。価格転嫁が進み利益率も改善する。低調な産業機械向けも需要回復の動きがみられる。ただ、米中の経済紛争などから供給網の綱渡りは続き、円安に安住しない経営体質の強化が求められる。

NTNの24年3月期は主力の自動車事業で値上げが進展し、同事業の営業損益が黒字転換した。25年3月期は構造改革費用を計上し当期減益を見込む。

米中紛争などのリスクを想定し、供給網を複線化し事業継続計画(BCP)を強化する。一方でコストや製品の競争力を高めるため、工場の部分的な停止や生産配置の変更など世界規模で拠点を再編する。鵜飼英一社長は「3年後には株主資本利益率(ROE)8%(24年3月期は4・4%)を出せる経営体質に変える」と意欲を示す。

日本精工の25年3月期は増収、各利益段階で増益を見込む。半導体関連を中心に24年10月以降に設備投資需要が回復し、自動車生産台数も23年度並みを維持すると想定。工作機械や半導体製造装置、風力発電向けに販売が伸び、原価低減効果も利益を押し上げる。

事業別の売上高では、工作機械や半導体向けなどの産業機械事業が前期比9・6%増の3780億円を見込む。鈴木啓太最高財務責任者(CFO)は「工作機械や半導体製造装置に使われる軸受は全体需要が高まる少し前から受注が増えてくる先行指標の面がある」とし、10月以降の需要回復に期待する。

ジェイテクトの24年3月期の産機・軸受事業は「日本やアジアで販売が減少したが、欧州などで増加した」(神谷和幸CFO)結果、売上高は同1・9%増の3580億円。一方、事業利益は半導体やロボット関連の市場停滞や原材料費、エネルギーの高騰の影響で同25・6%減の126億円にとどまった。

25年3月期は市場回復を見通し、増収を予想。利益も「原価改善活動、適切な売価転嫁を進めて増益となる見込み」(同)だ。

軸受大手は業績改善こそ続くが、長期で大幅な円安という追い風に乗っている側面が大きい。かなりの円高に転換しない限り、25年度も業績は押し上げられる。だが、電気自動車(EV)の台頭や中国での日系自動車メーカーの後退などから、軸受の市場環境は激変している。円安の風が続くうちに、製品競争力の向上やBCP強化などで体質の強靱(きょうじん)化に向けた先手の経営が求められる。

日刊工業新聞 2024年05月21日

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