「ペロブスカイト太陽電池」耐久性向上のカギ、封止樹脂でトップ目指す
次世代太陽電池の本命と期待される「ペロブスカイト太陽電池」の性能はそれを構成する素材の力も左右する。ペロブスカイト太陽電池をめぐる素材の動向を追う。
ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて耐久性は重要な課題だ。耐久性を高める上で、水蒸気や酸素から発電層を保護する封止樹脂は重要な役割を担う。
封止材メーカーのMORESCO(モレスコ)は、自社が誇る技術でペロブスカイト太陽電池の封止材需要を狙う。桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が国産ペロブスカイト太陽電池の実用化を目指して23年10月に立ち上げた技術連携コンソーシアムに参画しており、他の参画企業と連携しながら研究開発をしている。
モレスコは有機溶剤を含まない「ホットメルト接着剤」が主力。大人用紙おむつをはじめとする衛生材製品や自動車内装の組み立て用に展開している。その製品で培った高分子の変性技術や配合技術などを基に、ガラス基板の有機ELディスプレイ用封止材を開発し、中国や台湾のメーカーに供給している。有機ELはペロブスカイト太陽電池と同じく、水分を忌避するため、封止材には非常に高い保護性能が求められる。同社製品はその性能が評価され、ガラス基板の有機EL用で世界シェアの過半を占めるという。
封止材単体としての性能だけでなく、利用した際に製品全体で効果を発揮するよう設計する技術力も自負する。また、有機材料を発電層に用いた有機薄膜太陽電池にも封止材の開発をきっかけに参入しており、18年からは製造・販売を手がけている。こうした技術・ノウハウを生かして開発を進める。
封止材は外部からの水などの侵入を防ぐと同時に、封入する材料を劣化させない組成が必要になる。これまでに開発した封止材で、ペロブスカイト太陽電池の発電層を劣化させない性能を確認した。
課題もある。フィルム基板の曲がるペロブスカイト太陽電池に適用する場合、折り曲げを繰り返しても耐久性が損なわれない追従性が要求される。ガラス基板の有機EL用封止材では求められない要素だ。屋外利用を前提にすると、耐熱性の向上も必要という。前出のコンソーシアムには、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の発電層を封止材と共に保護するバリアフィルムを手がける麗光(京都市右京区)が参加しており、同社のバリアフィルムと連携しつつ課題の解決を図る。
モレスコは中期経営計画においてペロブスカイト太陽電池用封止材の開発を重点施策に掲げており、26年度以降の製品供給を目指す。同社デバイス材料事業部の細岡也寸志部長は「封止材メーカーとしてトップシェアを目指したい。国内で実績を積み上げ、海外にも展開していく」と意気込む。
積水化学、世界トップシェアの技術応用
ペロブスカイト太陽電池の事業化を目指す積水化学工業は10年相当の耐久性を実現したと21年に公表したが、その実現の背景には、自社の技術を生かして開発した封止材がある。同社は液晶ディスプレイにおいて二つの基板を接着し、液晶材料を封入する液晶シール材や自動車向け合わせガラス用中間膜の製品でそれぞれ世界トップのシェアを持つ(自社推計)。ペロブスカイト太陽電池用の封止材にはそれらの技術を応用した。高い封止性能を維持しつつ、ペロブスカイト太陽電池の発電層に影響しないように材料を最適化した。
積水化学は25年までに、耐久性について20年相当に高める目標を掲げている。同社PVプロジェクトの森田健晴ヘッドは「封止技術は一定程度できている。あとは(製品のサイズに)合わせ込む。達成できるだろう」と自信を見せる。