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鴻海傘下でシャープは「“白物家電のアップル”になることも可能だ」

買収決定。専門家は両者のシナジーをどうみる?
鴻海傘下でシャープは「“白物家電のアップル”になることも可能だ」

シャープの高橋興三社長(左)と鴻海の郭台銘会長

 台湾・鴻海精密工業によるシャープ買収が決まった。郭台銘鴻海会長は「シャープの潜在力を引き出し、ともに成長する」とコメントし、高橋興三シャープ社長も「両社の創造力と起業家精神で技術革新を加速する」とした。鴻海・シャープ連合は一見すれば、国内外の競合他社にとって脅威だ。二人の専門家に両者のシナジーについて聞いた。

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 鴻海によるシャープ買収の狙いは、商品企画力の獲得だ。鴻海は高い品質で効率よくモノを作るのは得意だが、自社ブランドとなると弱いのが悩み。シャープの企画力を手に入れ、総合電機メーカーとして地位を確立したい考えだろう。技術流出を危惧する声もあるが、鴻海の規模などメリットの方が大きい。やり方次第ではシャープが「白物家電のアップル」になることも可能だ。

 日系家電メーカーはピークの80年代ですら、技術力のみで差がつくテレビやビデオなどを海外展開してきた。韓国、中国勢は音響・映像家電から白物家電まで認知度を高める投資を続け、成功。この買収劇を機に「優れた技術だけが常に利益を生む」という呪縛から逃れることが大切だ。

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 シャープ、鴻海の中小型薄型パネル分野でのシナジーは、需給のバランスが取れる点だ。鴻海はシャープからパネルを調達して需要を満たし、グループ内の調達比率を向上させ収益性を高められる。一方のシャープは鴻海という優良な供給先を確保できる。滞っていた設備投資を再開できるのも利点だ。

 特に注目したいのはパソコンやタブレット(携帯型情報端末)向け中型パネル。鴻海は、これらの機器の世界大手メーカーから組み立て業務を受託しており、シャープ製パネルの採用が増えていくはずだ。有機ELへの対応では、鴻海については資金の出し手という点しか期待できない。シャープが技術を磨いていくしかない。
日刊工業新聞2016年3月31日「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
液晶や有機ELばかりが注目されるが、白物家電やスマホなどのスケールに注目したい。

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