トヨタ出身とプロパーがトップ支える…ダイハツ再生へ、改革貫徹できるか
ダイハツ工業が3月に刷新した経営体制では、井上雅宏社長をトヨタ自動車出身の桑田正規副社長と生え抜きの星加宏昌副社長が両脇から支える陣を敷いた。トヨタの経営トップとパイプが太い桑田副社長は、認証不正を招いたダイハツの組織にメスを入れる。星加副社長はダイハツのモノづくりを最も知る経緯から再発防止の重責を担う。3人が「ワンボイス」(井上社長)で足並みを乱さず改革を貫徹できるかが、再生の成否につながる。(大阪・田井茂)
「現場とはよく対話し『温度感』を知った上で、方向を決めることが大切になる」。桑田副社長は実務に携わる現場が受け入れられるタイミングの勘案も含め、慎重に組織を改める意向を示す。
ダイハツは階層が多く上意下達で管理層の領域も広く、現場との隔たりが大きいと指摘。工場を含め職場が分散しているにもかかわらず、人事など経営部門も手薄という。「この企業風土では、『きつい』と声を上げられず、聞いてももらえなかった。ムダな書類は作らなくてよいとか、上からはっきり言ってあげないといけない。肩書きでなく、役割で若い人材を登用する。現場がついてこられるかも考え、改めていく」と決意する。
自身はトヨタで営業を振り出しに総務・人事で職能を高めた。前職のトヨタ自動車九州副社長では、週1回、欠かさず現場の若いリーダーと対話した。トヨタの豊田章男会長・佐藤恒治社長から直々にダイハツ転出を要請され驚いたが、トヨタ出身の井上社長や自身が思い通り決めるのでなく、ダイハツをしっかり考える社員に光を当て、仕事をしやすく助けるようにと求められた。「ダイハツとトヨタは向き合う必要があり、我々はその中継役。トヨタのトップと一緒に仕事してきたので話が通じる」とパイプ役が強みになる。
一方、前経営陣からただ1人取締役に再任した星加副社長は「不正については大きな責任を感じる。再発防止をやり遂げ、従業員のため自分は残ったのではないか」と話す。二度と不正を起こさないと宣言した「三つの誓い」の改革推進部長を兼務。特に問題視された短期の開発日程では、正しい認証手続きを厳格に実行できるようマニュアル整備を始めた。「これからは開発の節目ごとに『関所』を設け、問題があれば止めてみんなで考え改め、後工程の認証作業の負担を減らす。輸出先が90カ国で認証が1車種ごとに異なり負担の重い海外認証は、要員を倍に増やす。将来を考え、トヨタで若手に認証技能も学ばせる」と改善の経過を説明する。
星加氏は生産技術と製造部門で会社人生の大半を過ごし、車づくりのチームプレーをたたき込まれた後、調達や経営管理に従事した。「抜き取りや完成全数の検査を担当したが、認証にはあまり立ち入れなかった。現場を隅々見られず、悩みも聞けなかった」と悔やむ。ダイハツのプロパーとして、多様な背景からなる組織を融和する役割が求められる。「プロパー、トヨタの出身に限らず再生しようと頑張る若手は多い。顧客だけでなく、従業員の満足度も上げないといけない」と誓う。
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