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新年度に向け続々誕生。保険の新商品は需要を喚起できるか

 もうすぐ2016年度。4月からの新年度に合わせ、保険業界では新しい保険商品やサービスが続々と登場する。長生き化に合わせた終身年金保険、8年ぶりの主力商品の改定、契約手続きの即日化。さらに会社や株主から会社役員へ起こされた訴訟に備える保険も登場する。時代に合わせた新たな商品・サービスの投入で各社は需要喚起を図る。

 長生き化に備えます―。日本生命保険が投入するのは終身年金「グランエイジ」。契約者が生存している限り、年金を毎年支払う。死亡した場合の保険料の払戻金を少なくする分、年金の原資に回すように設計。長生きするほど年金の受取額を増やすことができる。

 厚生労働省によると日本の平均寿命は右肩上がりで伸びている。50年には男性83・5歳、女性90・2歳に上昇する見通し。長生き化が続くほど老後の生活に備える所得の確保が課題となる。公的年金の給付削減の可能性がある中、公的保険をカバーする私的年金として注目を集めそうだ。

 約8年ぶりの改定―。三井生命保険は主力商品を改定し、「大樹セレクト」を投入する。主契約の死亡保険に特約を付ける仕組みを見直し、主契約をなくし、特約の組み合わせで設計できる。死亡保障や医療、介護など4分野から保障を選択でき、生活環境の変化にあわせて保障の変更も可能だ。

 特約の組み合わせ型保険は、医療や介護など生存リスクに備える消費者ニーズに対応するもので、太陽生命保険が導入して以来、日生や富国生命保険なども投入している。

 契約手続き、当日に完了します―。ソニー生命保険は保険の契約手続きを即日完了できるシステムを開発した。自動査定機能の導入により、従来は平均7・5日要していた事務処理が、申し込みをした日に完了できる。同社によると、業界初のサービスという。

 同社はこれまでタブレット端末を活用した契約手続きのペーパーレス化を進めてきた。手続きの即日完了も実現したことで営業の効率化はさらに進化した。サービスは3月中旬から始まっている。

 役員に対する訴訟をカバー−。東京海上日動火災保険は役員賠償責任保険を4月に改定する。従来は主に株主による役員への訴訟を想定しており、会社が役員に訴訟を起こす場合については、特約でカバーすることが多かった。同社は商品改定によって、会社訴訟の事例も対応する包括的な商品構成にし、基本補償を充実させた。

 同保険を巡っては一定の手続きを踏めば、役員個人が一部負担していた保険料を全額、会社が負担できるようになる。これに伴い、補償内容を拡充する動きが予想されている。

 損保ジャパン日本興亜は5月に商品改定し、第三者委員会の決議による会社訴訟などにも対応できるようにする。三井住友海上火災保険も16年度に商品改定を検討するという。
日刊工業新聞2016年3月25日金融面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
去年登場した「痴漢に間違われたら弁護士にすぐに連絡が取れる保険」などと比べれば普通というか地味というか堅実というか。インパクトの大きさと実際のニーズの多さは違うので。

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