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中興化成、フッ素樹脂離型シートをMRI向け素材などに新規開拓

東京ドームにも採用、透光性に優れ表面の汚れも雨で流れる
中興化成、フッ素樹脂離型シートをMRI向け素材などに新規開拓

フッ素樹脂離型シート

 中興化成工業(東京都港区)は、電子部品の熱融着に使われる離型シートを磁気共鳴断層撮影装置(MRI)など高度医療機器向け素材として展開する。ポリイミド樹脂シートの表裏にフッ素樹脂をコーティングした製品を開発。医療機器部品の国内大手が代替材として採用したことを追い風に、用途開拓を加速する。従来の用途とあわせて、2018年度の製品売上高を14年度比8倍の1億円規模に引き上げる。

 医療機器用途ではポリイミド樹脂シートの代替に使われており、中興化成工業は部品の性能向上に貢献できるとみている。松浦工場(長崎県松浦市)で生産し、必要に応じてクリーンルームなどに数千万円規模の投資を検討しており、顧客の品質要求に沿った生産体制を整える。また離型シートとしても表裏で複数回利用できるようになるため、消耗品コストを抑えたい燃料電池メーカーなどで評価段階にあるという。

 同社の離型シート「FPIシリーズ」は、ポリイミド樹脂シートの表面にフッ素樹脂を塗布加工した構造により、ガラスクロス製と同等の寸法安定性と高い平滑性を備える。表面の凹凸が製品の性能に影響しやすい電子部品などの製造に用いられる。このほど開発した「同100」はフッ素樹脂を両面に加工したもので、幅は最大480ミリメートル。同社はフッ素樹脂をもう一層重ねた製品の開発にも着手している。
日刊工業新聞2016年3月29日素材面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
中興化成工業はフッ素樹脂をはじめとする高機能樹脂の成形品を手がける。主力のフッ素樹脂粘着テープは食品容器の封緘に用いるヒートシール装置で、圧着部を覆う離型材として浸透。アジアでは模倣品が出回るほど高い認知度を誇る。最近は、リチウムイオン電池の生産工程でも使われているという。ガラス繊維でできた基材にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含浸させ、焼成した建築用の膜材では特に存在感を放つ。耐候性や不燃性、透光性に優れ、表面の汚れも雨で流れるのが強み。東京ドームのほか、北京五輪のメーン会場となった北京国家体育場でも採用されている。 (日刊工業新聞社編集局第ニ産業部・堀田創平)

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