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売上高125億円からの破産劇、コロナが浮き彫りにした脱毛サロンの潜在的課題

売上高125億円からの破産劇、コロナが浮き彫りにした脱毛サロンの潜在的課題

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脱毛サロン「銀座カラー」を運営していたエム・シーネットワークスジャパンは、2023年12月15日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。

同社は1993年に設立され、美容脱毛サロン「銀座カラー」を展開し、さまざまなキャンペーンを実施して顧客を獲得。2020年4月期には、売上高約125億6100万円を計上していた。業容は拡大し、好調そのものに見えた同社だったが、実情は異なり20年4月期は約5億円の営業損失を計上。「美容脱毛」よりも脱毛効果の期待できる「医療脱毛」の低価格化が進み「美容脱毛」の需要が減少したことや家庭用脱毛器の普及による需要の減少が要因となり、採算が取れなくなっていたようだ。

その後は、新型コロナ感染拡大の影響で一時全店舗休業となるなど事業環境が急速に悪化。資金繰りに窮し、自力での事業継続を断念した。

脱毛サロンは、脱毛機械を導入すれば、運営にかかるコストは基本的に固定費に限られる。このため多くの業者が大規模な宣伝活動を展開してきた。その結果、業績が悪化した途端、広告宣伝費が重くのしかかり、急速に資金繰りが悪化する業者が多数見られている。広告宣伝費を考える時に、前受け金の存在も忘れてはならない。

多くの脱毛サロン運営業者はこの前受け金によって多額の費用を広告宣伝費に投入してきたが、このビジネスモデルは一定の新規顧客を獲得し続けなければならず、新規顧客がいなくなれば急速に資金繰りが悪化することになる。

コロナにより業績が悪化した脱毛サロンは確かに少なくない。しかし、本当の問題はコロナではなく、前受け金による過大な広告や大幅な値引きで顧客を獲得する脱毛サロンのビジネスモデル自体にあり、潜在的な課題をコロナが浮き彫りにしたといえる。脱毛サロン・クリニック需要はどう変化するのか。24年、与信判断を厳しくすべき業界の一つだろう。(帝国データバンク情報統括部)


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日刊工業新聞 2024年04月25日

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