たんぱく質の結晶化技術で創薬の革新に挑む。阪大発VBの実力とは!?

創晶「リスク管理が大切な経営とリスクに挑戦する研究という真逆のベクトル」のはざまで

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「次の働き方を考えたとき、起業しかないと思った」と安達社長
 人間の体を構成する膨大な種類のたんぱく質。そのいずれかに異変が生じると病気発症の原因になる。治療薬開発のためには、たんぱく質の立体構造を解析し、それに合う化合物を探さなければならない。大阪大学発ベンチャー(VB)の創晶は、たんぱく質の結晶化技術で創薬分野に革新をもたらした。安達宏昭社長は結晶化技術を軸に、多角的なビジネスを展開。少数精鋭のエキスパート集団を構成し、100年先を見越した「継営」を続けている。

 【起業しかない】
 「VB設立の目的は、よい技術を社会で使ってほしいという思いから」と安達社長は話す。レーザーの照射でたんぱく質の結晶化に成功したが、レーザー照射や溶液撹拌などの手法は研究者にとっては常識はずれの発想だった。大学という異分野交流ができる環境にいたことが、結晶化技術の確立につながったといえる。そんな安達社長の子供のころの夢は「サラリーマンになることだった」というから驚きだ。畳屋を営む両親のもとで育ち、母親の勧めもあり、安定したサラリーマンの道を志したという。

 大学院卒業後、大手企業に就職。組織の中でやりたいことができない矛盾を感じ、入社から3年後に会社を去った。「サラリーマンを辞めた後の次の働き方を考えたとき、起業しかないと思った」(安達社長)。だが、VB設立のための明確なテーマがなかった。阪大の博士課程に戻り、修士時代に研究していたたんぱく質と有機低分子化合物の研究に再度取り組んだ。結晶化技術を確立したのもこのときだ。

 【滑り出しは順調】
 「阪大のたんぱく質コンソーシアムに加盟している製薬会社に結晶化の技術を紹介し興味を持ってもらえた。滑り出しは順調だった」(同)。2008年のリーマン・ショックの影響で、苦しい時期も経験したという。「景気の波にのまれるもろさがあった。出だしが順調だった分、当時は慢心もあったと思う。リスク管理が大切な会社経営と、リスクに挑戦する研究という真逆のベクトルのはざまで苦労したが、社員の結束力が強まる機会にもなった」(同)と当時を振り返る。

 結晶化技術を「形が複雑で相互作用の弱い分子を、同じ向きに3次元的に並べる技術。例えば、人文字を作る時の指示に似ている」(同)と説明する。今では低分子化合物の結晶化が売り上げの6割を占め、たんぱく質の結晶化を上回る。

 難題解決を担う創晶のビジネススタイル。舞い込んでくる依頼は一筋縄にいかないものばかりだ。「受託ビジネスでは現場が常に鍛えられる。過去の経験と知見の積み重ねが顧客の確保につながっている」(同)という。結晶化の成功率は100%ではない。ときには顧客の要望に応えられないこともある。失敗した場合でも、過程を綿密に記した報告書を提出するなど、顧客への対応を怠らない。「期待に応えられなかった場合でも『やり尽くした感』を示すことが大事」(同)。創晶で無理なら仕方ないと言わしめるほど、顧客からの信頼度と満足度は高い。

 【挑戦は続く】
 同社は各事業を分社化し、グループ企業として多角経営する体制をとっている。年内に非線形光学結晶セシウム・リチウム・ボレート(CLBO)の会社を新たに立ち上げる。「ニッチな部分の課題解決を担うのが創晶グループの役割。結晶化の技術を軸に領域を広げ、各分野の課題に細かく対応していく」。安達社長の挑戦は続く。

<企業プロフィル>
 ▽代表取締役=安達宏昭(あだち・ひろあき)▽住所=大阪府吹田市▽資本金=6080万円▽設立=2005年7月

日刊工業新聞2015年04月27日 中小・ベンチャー・中小政策面

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

特にヘルスケア関連のテクノロジーは大学の研究室に埋もれているケースが多い。安達さんはにはもともとオープンなマインドがあったが、必ずしも研究者はそういう人が多くない。この分野で日本のポテンシャルが高いのは明白。大学から技術や研究者を引っ張り出し、目利きができるベンチャー投資家が必要だ。

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