単層CNT、ハイエントロピー合金触媒で高効率合成…名城大と京大が実現した意義
名城大学、京都大学の共同研究チームは、ハイエントロピー合金(HEA)と呼ばれる合金ナノ粒子を触媒に用いて、直径1ナノメートル(ナノは10億分の1)程度以下の単層カーボンナノチューブ(CNT)の高効率な合成に成功した。エレクトロニクス分野への応用に適した細径の単層CNT合成に有効なことも分かった。
研究では、京大の北川宏教授らが開発した手法で、白金族の5元素(白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム)を原子レベルで均一に混ぜ合わせたHEAのナノ粒子を作製し、触媒に用いた。名城大の丸山隆浩教授らが保有する化学気相成長(CVD)装置で単層CNTを合成した。白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、鉄、コバルトをそれぞれ単体で触媒に用いた単層CNTも合成し、生成量と構造を比較した結果、単層CNTの生成量の増加と構造制御にHEAナノ粒子が有効なことが分かった。
HEAナノ粒子を触媒に用いて細径の半導体型単層CNTの高効率生成が可能になれば、現在のシリコン半導体素子を上回る高性能デバイスを実現できる。また単層CNTは電気抵抗が小さく素子動作中の発熱量が抑えられるため、省エネルギー型電子デバイスの実現も期待できる。
日刊工業新聞 2024年04月09日