学外からも熱視線…東京海洋大が土地活用で生み出す真の統合効果
東京海洋大学が大規模な土地活用と施設整備に動いている。対象となる旧東京水産大学の品川キャンパス(東京都港区)の敷地は約2万3000平方メートル、旧東京商船大学の越中島キャンパス(同江東区)は約4万3000平方メートルに及ぶ。定期借地の民間マンションや国際寮の建設に動く一方、産学連携施設やアリーナなどこれから検討する案件も多い。グラウンドや宿舎が多く余裕ある敷地を使い、自力の建物建て替えにどこまで臨めるか。東京水産大と東京商船大の統合から20年強、学外からも熱い視線が注がれている。(編集委員・山本佳世子)
国立大学の土地活用は、飛び地をマンションや駐車場に転用する例が多い。今回は稼働中のメーンキャンパス内で、野球場など運動施設をはじめ広い部分を使うのが特徴だ。
品川のA区画4000平方メートルは、10階建て350室からなる外国人・日本人学生らの国際混住寮に向けたもの。官民連携(PPP)方式で大和ハウス工業グループが手がけ、2026年2月に完成予定だ。また、数十億円の収入が見込まれるのはB区画4000平方メートルだ。75年間の定期借地で、東急不動産が14階建て約200戸の分譲マンションを建設するためだ。
さらに文部科学相の認可取得済み・取得前を合わせて1万5000平方メートルの敷地がある。候補は大学のインキュベーション施設を含む民間貸し付け建物などだが、具体案にはなっていない。ただ新幹線の品川駅から徒歩10分、羽田空港も近い絶好の地だ。「品川の体育館を入学式などに使えるアリーナとして整備し、国際会議場にも使いたいという学内意見がある」と桑田悟理事はさまざまな夢を描く。
一方、越中島もJR駅に近く、大通りを挟んだ南側が教育研究エリアだ。東京商船大は船乗りを養成するため全寮制だったことから、北側に古い宿舎がいくつもある。グラウンドは両エリアにそれぞれあるが、一つにする可能性が高い。現状では大まかな区分け計画だけだが地域連携の施設や国際寮、アウトリーチの博物館など多様な設計が可能だ。
東京海洋大の発足は、国立大学法人化の1年前の03年。教職員は法人化対応が優先で、教育カリキュラムも元の2大学のままになっていた。土地活用による資金調達の法改正が17年、キャンパスマスタープランのたたき台が出されたのが19年。いよいよ運動施設も集約となれば、いまだに分離が見られる部活動など、学生交流も大幅に向上する。
敷地に恵まれた同大だが、建物の老朽化は他の国立大より深刻だ。経年25年超で大規模改修をしていないのは、全保有建物の約4割に上る。文部科学省は施設整備費補助金だけでなく、大学の自己財源での施設整備を推奨している。
土地活用の収入で建物を新設する建て替えローリング計画は、かなりの長丁場となる。高い潜在力ゆえの迷いを抱えつつ、真の統合効果を生み出そうとしている。