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レーザー核融合実用化へ、エクスフュージョンが世界初導入の設備で実験に乗り出す

レーザー核融合実用化へ、エクスフュージョンが世界初導入の設備で実験に乗り出す

模擬燃料ペレットにレーザーを当てる照射チャンバー

エクスフュージョン(大阪府吹田市、松尾一輝社長)は、今夏から浜松市の自社研究施設でレーザー核融合の実用化に向けた実験に乗り出す。時速180キロメートルで射出する模擬燃料ペレットに、10ヘルツのレーザーを2方向から当てる実験を行う予定。将来は時速360キロメートルのペレットに6方向以上からレーザーを当てることを目指す。同社によると、高速で移動するペレットに複数方向から高繰り返しのレーザーを当てる実験設備の導入は、世界初という。

エクスフュージョンは中小企業基盤整備機構が運営する浜松イノベーションキューブ(浜松市中央区)に、延べ床面積約200平方メートルの自社研究施設をこのほど開いた。同施設に携わる従業員は約15人。

光源から2メートル離れた場所を飛ぶ直径3ミリメートルの模擬ペレットにレーザーを当てるレーザー追尾照射システムを備え、夏頃の本格稼働を予定。2027年度にも高出力レーザーを用いた実験を目指す。

これまで同社は光産業創成大学院大学に拠点を構え、レーザーを対象に当てる制御技術やミラーなどの光学関連品を開発してきた。

自社施設ではこれらの技術と高出力・高繰り返しのレーザーを照射するシステムを統合し、効率的に研究を進められるようになった。松尾社長は「浜松市は光関連産業が盛んでスタートアップにもフレンドリー。この地で研究を発展的に進める」と意気込む。

核融合は重水素と三重水素を核融合反応させ、膨大なエネルギーを取り出す技術。二酸化炭素(CO2)を排出しない発電方法としても注目を浴びる。レーザー核融合は他の核融合の方式に比べ、需要変動に応えられる電力源として実用化に期待がかかる。

日刊工業新聞 2024年04月05日

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