サッポロが「ヱビス」攻勢…発祥の地で35年ぶり醸造再開の狙い
連動企画、プレミアム訴求
サッポロビールはプレミアムビール「ヱビス」ブランドで攻勢を掛ける。ビール醸造設備を伴うヱビスブランドの体験拠点「YEBISU BREWERY TOKYO」(東京都渋谷区)の開業を控えた2日、発表会を開いた。ヱビス発祥の地で35年ぶりにビール醸造を再開。新たなフラッグシップ商品を提供するなど独自の開発機能を生かし、ブランド価値を訴求する。野瀬裕之社長は「新しい時代のヱビスブランドを展開する」と強調した。(編集委員・井上雅太郎)
YEBISU BREWERY TOKYOは複合商業施設の恵比寿ガーデンプレイス内に約17億円を投じて開業。延べ床面積は2544平方メートルで、ビール醸造エリアには130キロリットルの製造能力を持つドイツ製醸造設備を配置している。130年以上のブランドの歴史を紹介するほか、タップルームエリアでフラッグシップ商品「ヱビス インフィニティ」を通年提供する。
野瀬社長は「ヱビスのルーツの場所で、ビール製造を復活し、新たな魅力を発信することはビール事業にとって大事だ」と新拠点開業の意義を説明する。サッポロビールはビールカテゴリー回帰を重点戦略として展開する。
2023年10月のビール類酒税改正でビールカテゴリーの税率が下がり追い風が吹く。26年の酒税一本化でさらに減税になるため今後も需要増が期待できる。これをとらえて好調に販売を伸ばす主力スタンダードビール「黒ラベル」に加え、ヱビスでも攻勢に出る。
23年販売実績で黒ラベルは前年比11%増と大きく伸ばしたが、ヱビスは微減にとどまった。武内亮人常務執行役員は「プレミアムビールとしての提案が十分ではなかった」とするが、24年2月にヱビスビールのリニューアルを実施。さらに新拠点をドライバーとして連動企画などで展開を強化する。24年は同6%増の672万ケースの販売を目指す。
プレミアムビールカテゴリーではサントリーが「ザ・プレミアム・モルツ」のブランド戦略を強化。キリンビールはクラフトビール「スプリングバレー」でラインアップを拡充している。またアサヒビールも「アサヒ食彩」をコンビニ限定から全業態に移行し本格展開する。ヱビスが新拠点を生かした拡販戦略に打って出ることで、競争の激化は必至の様相だ。