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運転支援機能は運転手をわがままにする!?…米カーネギーメロン大などが示したリスク

運転支援機能は運転手をわがままにする!?…米カーネギーメロン大などが示したリスク

運転支援機能の普及は渋滞緩和に寄与する半面、新たなリスクをもたらす可能性もある(イメージ)

米カーネギーメロン大学の白土寛和助教とソニーコンピュータサイエンス研究所(東京都品川区)の笠原俊一研究員、米イェール大学のニコラス・A・クリスタキス教授は、運転支援機能で運転手が利己的になるリスクを示した。無線操縦の模型の車両が一本道を譲り合う実験で、緊急ブレーキや緊急操舵(そうだ)の支援機能を載せると、機械に判断を預けて交互の譲り合いが顕著に減った。単純な運転支援だけでない支援の必要性が示唆される。

一本道の両側に車両を配置し、すれ違って反対側に到着する時間で報酬を払う実験を行った。車両が道を外れると車速が落ち、2台で譲り合うとロスを最小化できる。運転手は車両搭載カメラの映像を見て遠隔操縦する。300人が参加し支援機能の有無など、条件による行動変化を調べた。

手動運転に「どうぞ」や「ありがとう」と相手に送るメッセージ機能を載せると片方が道を譲り、もう片方が通り抜ける譲り合いが交互に生じた。メッセージ機能がないと5%と少ないがメッセージ機能があると3割ほどに増えた。

この交互の譲り合いが緊急自動操舵機能を載せるとなくなる。自動操舵に運転を任せてすれ違うとメッセージの利用は4割から5%に減った。運転行動を評価すると利己的になっていた。運転を任せた方が報酬は大きくなり事故も減る半面、運転手の主観的な満足度には必ずしもつながらなかった。

互恵行動が減ったため研究チームは、機械に判断を任せることが許されると社会的規範が崩壊する可能性があると指摘する。実験は他の交通参加者がおらず、取り締まりもないため利己的な面が強調され得る。だが運転手が自己中心的になると支援機能で防げない種類の事故が悪化するなど検証が必要になる。

日刊工業新聞 2024年04月03日

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