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【ディープテックを追え】EV時代へ需要狙う。リチウム回収スタートアップの技術力

電気自動車(EV)などの普及に伴い、二次電池の材料であるリチウムの需要が高まっている。量子科学技術研究開発機構(QST)発スタートアップのLiSTie(リスティー、青森県むつ市、星野毅最高経営責任者〈CEO〉兼最高技術責任者〈CTO〉)は使用済みのリチウムイオン電池から効率的にリチウムを回収する。EVの普及を見据え、2026年以降の商用プラントの稼働を目指す。

同社の技術の強みは独自のセラミック分離膜だ。まず、使用済みリチウムイオン電池の高温処理により得られた灰や工場排水から水溶液をつくる。このニッケルやコバルトなどが混ざる水溶液を電極の間に設置したセラミック分離膜に通し、リチウムだけを選択的に抽出する。従来の溶媒やフィルターなどを使った方法よりも簡易かつ、高重度のリチウムを取り出せる。科学技術振興機構(JST)の研究支援事業「START」の実証では、塩湖や鉱山からリチウムを取り出すコストと比較しても安くリチウムを取り出せたという。

分離膜を複数枚並べ、ユニットを構成。このユニットを複数個搭載する装置を開発する。25年までにベンチスケールの装置を開発し、26年からは顧客の拠点に適用したり生産体制を確立したりする。28年からは工場排水に含まれる少量のリチウムを回収し、実績を積み重ねる。その後、より規模の大きい使用済みリチウムイオン電池からリチウムの回収を始める計画だ。政府がスタートアップの研究開発を支援する「SBIR」に採択されており、5年間で15億円の助成を受ける。

同社のリチウム回収技術は元々、核融合発電関連の技術として開発された。核融合発電では燃料である三重水素(トリチウム)を作るためにリチウムが必要になる。具体的には核融合反応により生じる中性子をリチウムにぶつけ、トリチウムを作る。

核融合発電は巨大なプラントのため、必要になるリチウムもほかの用途に比べ多くなる。そこで海水に微量に含まれるリチウムを回収するため、同社は技術を開発した。一方、現状の技術ではセラミック分離膜の特性上、水溶液がアルカリ性の方がリチウムを回収しやすい。ただ、星野CEO兼CTOは「開発を進めていく中で、新しい分離膜も出てくるはずだ」として、今後より高度な回収技術の開発する方針だ。将来的には海水からのリチウム取り出しを目指す。

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