リコー・積水化学・エネコートと実証…次世代太陽電池「ペロブスカイト」、東京都が実用化後押し
東京都はペロブスカイト太陽電池の早期の実用化を目指し、メーカー各社と連携し実証を進めている。リコーのペロブスカイト太陽電池を搭載したIoT(モノのインターネット)センサーを都庁の展望台などに設置したほか、2023年には積水化学工業、エネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)のペロブスカイト太陽電池を都庁や保有施設に設置。実証検証の場所を提供して開発を支援することで社会実装を後押しする。(高屋優理)
リコーのペロブスカイト太陽電池を搭載したIoTセンサー「LoRa通信CO2センサー」は、発電と蓄電をしながら連続動作して、環境データを測定する。電池交換や配線不要で屋内外のあらゆる場所に設置できることが特徴だ。東京都の実証では温度、湿度、照度、二酸化炭素(CO2)濃度などの環境データを測定し、合わせて発電性能や耐久性、通信状況などセンサーの有効性を検証する。
センサーは都庁展望室に5カ所と、東京都住宅供給公社が保有する高齢者向け住宅「コーシャハイム向原」(東京都板橋区)の5カ所に設置。コーシャハイム向原は屋内外に設置し、有効性を検証する。検証期間は25年3月までの1年間だが、リコージャパンの太田謙治専務執行役員は「耐久性が課題なので、実証で得たデータなどを見極めて早期に商品化したい」と話す。また「都庁展望室は外国人観光客など多くの人が往来するので、ペロブスカイト太陽電池の認知度、理解度の向上につなげたい」と期待を寄せる。
東京都では23年6月からエネコートテクノロジーズのペロブスカイト太陽電池と、マクニカのIoTセンサーを搭載した機器を都庁の環境局のオフィスに5台設置。同様に有効性の実証事業を進めている。実証は5月までで、終了後、結果を公開する計画だ。
また、東京都の下水処理施設「森ケ崎水再生センター」(東京都大田区)に積水化学工業のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置しており、実証実験を進めている。同センターのペロブスカイト太陽電池は大きさの異なる3種類の電池をそれぞれ3枚設置し、面積約9平方メートル、定格出力約1キロワットと国内最大規模の設備だ。実施期間は25年12月までで、下水処理施設という環境下での発電効率の測定や耐腐食性などを検証している。
小池百合子東京都知事は「東京はあらゆる場所で発電できる未来都市を目指している。さまざまな企業と連携してスピード感をもって実装を進める」と話す。積水化学は都内の再開発ビルに1000キロワット級のペロブスカイト太陽電池を導入する計画。東京都では都市のポテンシャルを生かし、企業の研究開発や社会実装をサポートする。