「MSJ」撤退の経験生かす。次世代単通路機開発へ…経産省がまとめた航空機産業・新戦略案の全容
国内で量産体制構築
経済産業省は27日、航空機産業の新戦略案をまとめた。アジアを中心に市場が拡大する単通路機と水素など次世代航空機への参画を両輪で進め、2035年以降の単通路機の開発・量産化を目指す。三菱重工業の「三菱スペースジェット(MSJ)」事業撤退の経験を生かし、日本単独ではなく海外航空機関連企業との国際連携を重視。技術開発に加え、安全基準の策定や航空機の修理・整備拠点拡充といった支援の幅を広げる。
27日に開いた航空機戦略を議論する有識者会議で示した。新戦略案は35年以降の単通路機の事業化を見据え、欧米の航空機メーカーが検討する次期単通路機開発への参画や次世代機向けの技術開発を柱とした。航空機産業のボリュームゾーンになる単通路機市場と水素や電動航空機といった新市場の攻略に照準を定め、事業化に必要な経験を積み上げる。
単通路機分野では日本勢が強みを持つ先進複合材や高効率の生産技術を欧米の航空機メーカーに提案し、開発段階からの参画を目指す。次期単通路機の中核技術を押さえ、最終組み立てを含む国内での量産体制構築を目指す。
水素航空機など脱炭素に寄与する次世代航空機開発では燃料電池などの技術の開発に加え、技術の安全性を裏付ける試験・実証インフラやルールを整備する。
経産省は国土交通省と連携しながら設計・製造・認証プロセスのデジタル変革(DX)や国内におけるメンテナンス・修理・整備(MRO)拠点の拡充支援も進める。
新戦略案にはMSJ撤退の要因分析を盛り込んだ。撤退の背景に航空機の安全認証プロセスや海外部品メーカーへの対応に関する知見不足などを挙げた。MSJを踏まえ、今後は日本単独で開発を進めるのではなく、欧米の航空機関連企業や有力な環境技術を持つ異業種との戦略的な連携を重視する。
日本の航空機産業は航空機メーカーへの部品供給で競争力を高めてきた。ただ日本勢が強みを持つ大型の双通路機から小型の単通路機へ需要がシフトしているほか、脱炭素化へ水素航空機などの次世代機の商用化に向けた動きも活発化している。MSJの経験を糧に航空機産業戦略を再構築し、日本の航空機産業の競争力維持・向上につなげる考え。
【関連記事】 航空機リースのからくり