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未来のバイオ実験はロボットにおまかせ

産総研などが実証に成功
未来のバイオ実験はロボットにおまかせ

実験のロボット化で研究コストは10分の1に減り、研究期間も短縮できる

 産業技術総合研究所創薬分子プロファイリング研究センターなど6機関はDNAとたんぱく質、細胞を扱うバイオ実験のロボット化に成功した。高度な手技が必要な実験を、複数の研究機関で完全にコピーして相互運用できる。実験者ごとの得意不得意がなくなるため、研究コストを10分の1に、期間を半分に短縮できると見込んでいる。産総研発ベンチャーのロボティック・バイオロジー・インスティテュート(RBI、東京都江東区)が事業化し、創薬産業などへ海外展開を始める。

 理化学研究所と東京医科歯科大学、慶応義塾大学九州大学、味の素と産総研の6機関で実験のロボット化と相互運用を確立した。DNAの発現量やたんぱく質の相互作用、細胞の薬物耐性を調べる実験を双腕ロボットで行う。研究者は実験ノートに手順を書く感覚で作業を入力でき、ロボットの知識は要らない。

 バイオ系の実験は作業者によって結果がばらつくことが課題で、研究費の9割以上が再現性のない実験に投じられているという。免疫クロマチン沈降など高度な手技が必要な実験でも、一度ロボット化すればすべての機関で使える。大学から製薬会社への技術移転を加速できる。

 大学にとってはDNAに強い研究室やたんぱく質に強い研究室のノウハウをまとめて共有できるため、海外の大型研究室に対抗できる。

 RBIが実験手順の整備や相互運用体制を整える。製薬会社が複数の研究拠点に導入する予定で、RBIが海外を含めて導入支援する。
日刊工業新聞2016年3月25日 ロボット
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
これは期待。バイオ実験は同じ作業をしているのに人によって違う結果になってしまうことが多い。「それで本当に正しい結果と言えるのか」と思いながらも、回数を重ねて「確からしさ」を高めるしかない。ロボットで実験作業のバラつきをなくせればムダがなくなるのはもちろん、実験の得手・不得手に左右されずに、純粋にアイデアを試せる場が増えそうだ。とはいえ「職人技」のような部分もないとは言えないので、そのノウハウをロボットに落とし込めるのかどうか。そしてクリーンベンチで行うような作業には対応するのだろうか。 このロボットがあったら、学生時代は実験下手と言われ、実験上手な先輩を横目で見ながら「どうしてだろう・・・」と自問していた自分も研究職を続けていた・・・かも?

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