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「国際卓越大」再申請の柱…早稲田大学が〝研究の司令塔〟新設

早稲田大学は全学の研究力強化をトップダウンで進める研究の司令塔「グローバル・リサーチ・センター(GRC)」を4月1日に新設する。私立大学が強い人文・社会科学系のボトムアップ型の個別研究にも横串を刺し、世界で戦える文理融合の大型研究拠点を複数構築する。2024年度に予定される国際卓越研究大学の公募第2弾に向け、GRCを早大の再応募計画の柱に据える。

早大の強みは国際日本学や実証政治経済学、ロボットやナノ材料など幅広く存在し、それぞれ研究所やセンターを有する。しかし競争的資金の事業に合わせた研究活動になりがちで、統一性はなかった。GRCはこれらを全学の戦略に沿って捉え、研究拠点を立ち上げる。この手法により、世界の課題解決に資する研究大学への転身を図る。

最初の拠点化テーマは、国際卓越研究大学の第1弾の応募で打ち出したカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)だ。環境経済、資源循環社会、省エネルギー半導体、熱エネルギーなどの研究活動に横串を刺して取り組む。このほか二つのテーマを検討中だ。自然科学系を人文・社会科学系がフォローする国立大学とは異なり、ビジョンの共有による包括的な融合研究で独自性を打ち出す。

このほか4月1日付で、社会貢献活動を推進する「グローバル・シチズンシップ・センター(GCC)」を同時に設置する。リピーターの多いボランティアセンター、地域や企業での本格的なワークショップ、リーダーシップ教育などのアクティブラーニングをGCCに集約する。既存の「グローバル・エデュケーション・センター(GEC)」と合わせ、三つのセンターの活動により、研究・教育・社会貢献の分野で世界トップ大学を目指す全学体制を整える。

日刊工業新聞 2024年03月22日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
国際卓越研究大学への各大学の2回目申請は、初回の計画をどのように変えていくのでしょうか。先日、東京大学が2回目申請を表明しましたが、中身は明らかになっていません。対して早大は初回にカーボンニュートラルに絞って打ち出しましたが、「求められているのは1テーマでの拠点ではなく、拠点を生み出し続ける研究システムの有りようだ」と理解し直して、大きく舵を切りました。自然科学分野で国立大学と戦うのではなく、私立大学らしい人文・社会科学分野を生かす点も、いいなと興味を持ちました。

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