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航空機エンジン新材料実用化へ…IHI、高耐熱「CMC」の採用目指す

耐久性評価試験、26-27年ごろ開始
航空機エンジン新材料実用化へ…IHI、高耐熱「CMC」の採用目指す

キグチテクニクスの高温材料試験装置

IHIは主力の航空機エンジン事業で、次世代材料のセラミックス基複合材料(CMC)の実用化に向けた耐久性評価試験を2026―27年ごろに始める。CMCは現在使われているニッケル合金より耐熱性が高く、タービンの羽根への採用が見込まれる。試験期間は数年間を想定。30年代半ばから後半に実用化が見込まれる次期単通路機用エンジンでの採用を目指す。

ニッケル合金の耐熱性能が1100度C程度なのに対し、CMCは1300―1400度Cと高く、エンジンの強度を高める新素材として注目されている。

評価試験は、金属材料の調整や評価試験を手がけるキグチテクニクス(島根県安来市)と共同で実施する。同社が試験装置を8台設け、1400度Cの環境で荷重を試験する。

キグチテクニクスは現在もCMCの試験を受託しているが、小規模にとどまっている。同社が設置する試験装置で、高温状態で引っ張りや曲げなどの荷重をかけ続け、CMCの疲労を確認する。1回1―2カ月かかる試験を何回も実施し、耐久性のデータを得る。

試験装置は航空機エンジンを手がける他の重工業大手にも開放する計画。試験を実施しない期間が生じるとみており、その間は他社が試験できるようにしてCMCの実用化・普及の流れを作る。

航空機部品は経済安全保障推進法の特定重要物資に指定されており、IHIなどは評価試験で事業費の半額の約1億1000万円の補助を受ける。

このほか、航空機エンジン部品のタービンディスクの国内供給体制の強化にも取り組む。タービンディスクはニッケル合金製の大型鍛造品で、海外製が多い。プロテリアル(旧日立金属)と共同で製造工程を研究し、強度や耐熱性の向上を目指す。特定重要物資の指定により、事業費の半額の約5000万円の補助を受ける。


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日刊工業新聞 2024年03月20日

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