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関西学院・関西大・立命館…関西私大の拠点新設が相次ぐ背景

関西学院・関西大・立命館…関西私大の拠点新設が相次ぐ背景

関西学院は神戸市内の用地を取得し、新キャンパスを整備する(左から森康俊関西学院大学学長、久元喜造神戸市長、村上一平関西学院理事長)

関西の有力私立大学が、都市部近郊でキャンパスの新設や拡張を急いでいる。兵庫県西宮市が本拠地で傘下に関西学院大学を擁する学校法人関西学院は、約100億円を投じて神戸市内の用地を神戸市から取得する契約を結んだ。関西大学や立命館大学も、大阪市内から近い立地でキャンパスの新設や拡張を計画する。都市部に拠点がある大学は、学生を誘引する力が強い。成長を維持するため、各大学の投資が積極化している。(大阪・石宮由紀子)

関西学院は再整備計画が進む王子公園(神戸市灘区)の敷地の一部を神戸市から譲り受け、4000人規模の学生が学ぶ「王子キャンパス(仮称)」を2029―31年度に設置する計画だ。国際化や産学官民連携を図りながら、関西学院大のデジタル技術の主要拠点になるようなキャンパスを整備するという。

世界有数のハブ港を持ち、産業集積地だった神戸市は1995年の阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた。街は復興を遂げたが近年、若年層の市外への流出が顕著だ。進学を機に神戸市を離れる若者は多く、神戸市は街の活力が今後低下する懸念を持つ。

一方で、関西学院は関西で知名度も人気も圧倒的に高いものの、周辺には同志社大学や関西大、立命館大がある。これらの大学への交通網が整備されていることもあり、府県をまたぐ通学も多い。このため、大学間で関西在住の学生を取り合うなどの競争は激しい。

そこで関西のほか全国各地から学生を集めるには、都市部の拠点を持つことが有力な戦略の一つになり得ると関西学院は考えたと見られる。双方の思惑が一致し、神戸市は関西学院の新キャンパス誘致に成功した。王子公園周辺は関西学院の発祥の地であり、西宮市に移転した際に阪神急行電鉄(現阪急電鉄)が関学から購入の上で神戸市に同公園界隈の土地を無償寄付した経緯がある。

関西私大の主なキャンパス

関西学院大と競合する大学でも、都市部に近い場所でキャンパスを拡張している。関西大は武田薬品工業から大阪府吹田市にあった研修施設を取得し、2023年に「吹田みらいキャンパス」として開学した。同キャンパスにデータサイエンスを軸に据えた新学部を25年4月に設置する構想を持つ。

立命館大は24年度に、大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)内でメディア関連教育の拠点となる新棟が稼働する。びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)の情報理工学部や映像学部など2学部・2研究科を大阪いばらきキャンパスに移転する方針。クリエーティブ人材の育成を強化する狙いだ。

大規模工場や大学の都市部への集中を防ぐ工場等制限法の廃止に伴って、企業の工場のほか、大学が都市部に立地できるようになった。こうした状況の中、都市部に再進出する大学は全国的に増加し、関西の私大でも目に見える形で都市部への回帰が始まった。学生を集めやすいほか、刺激のある都市部での学びへの期待は大きい。また大学には立地する街の活性化の担い手としての役割を求められそうだ。

※5段落目の最後の文章につきまして最初の記事では阪神急行電鉄(現阪急電鉄)が無償寄付した部分が抜けていましたので、訂正いたしました。
日刊工業新聞 2024年2月27日

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