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セイコー5割増・カシオ4割減…時計3社の営業益動向で分かれた明暗

セイコー5割増・カシオ4割減…時計3社の営業益動向で分かれた明暗

シチズン時計は23年12月、北米初となるシチズンウオッチグループの旗艦店をニューヨーク市にオープン

個人消費・訪日客追い風

時計業界の事業環境が改善しつつある。新型コロナウイルス感染症拡大の影響が薄れて個人消費やインバウンド(対日外国人)需要が回復傾向にあり、為替の円安も追い風だ。大手3社であるシチズン時計、セイコーグループ、カシオ計算機の2024年3月期連結業績は全社が増収、2社が営業増益の見通し。ただ、コロナ禍前の時期と比べた際の営業利益の増減率には差が出ている。各社は環境変化に対応し、飛躍につなげられるかが試される。

3社の連結営業利益をコロナ前の19年3月期実績と現在の24年3月期見通しで比較すると、セイコーグループは約50%増、シチズン時計は約12%増。一方、カシオ計算機は約40%減で、明暗が分かれている。

日本時計協会によると、腕時計を主体とするウオッチは、23年(1―12月の見込み値)の国内時計メーカーによる出荷数量が前年比7%減の4900万個。一方、出荷額は同10%増の2808億円となった。腕時計型電子端末のスマートウオッチを除く時計市場は世界的に販売数量が減少傾向にあるものの、価格帯は上がっていくとみられる。

スマートウオッチの台頭で低価格帯の時計の売れ行きは厳しいが、コロナ禍でもスイスブランドの高級な時計は投機目的で注目されるなど、市場の二極化が進む。シチズン時計の佐藤敏彦社長はこうした状況を「自分を高揚させてくれる、誇りとして良い時計を持ちたいという市場価値が生み出されつつある」と分析する。

時計各社は高価格帯の需要増を踏まえて販売単価の向上に注力する。シチズン時計は製品ミックスを見直す。好調な「アテッサ」ブランドでは30万円前後の高価格モデルの売れ行きが良く、10万円前後が多く売れていた一昔前には考えづらかったことだという。中・高価格帯の製品ラインアップを増やしていく。

「23―25年度の中期経営計画3カ年で時計の収益力を回復させなければならない」と語るのは、カシオ計算機の増田裕一社長。コロナ前は、手に取りやすい価格帯の耐衝撃腕時計「G―SHOCK(ジーショック)」が好調だったことに加え、中国での販売が急成長していた。収益力回復に向けて、高価格帯の品ぞろえの強化やインド市場の開拓、リアルに加えてオンラインでの顧客接点強化を掲げる。

セイコーグループ傘下のセイコーウオッチは2月、世界最大のグランドセイコーの店舗をニューヨーク市に開設した

一方、高級ブランド「グランドセイコー(GS)」が好調なセイコーグループは、さらなる拡販に打って出る。高橋修司社長は「(世界の)各エリアに応じた戦略が必要」と強調する。米国については「高級品市場の景気が減速ぎみなので次の施策を打たないといけない」としながらも、優先順位の高い流通開拓は終わり「セカンドステージに入った」と語る。今後は欧州、東南アジア、中国でのGSの販売強化にも力を注ぐ。

ただ、高級ブランドにおけるスイス勢の牙城は高い。腕時計ではロレックスをはじめ、「オメガ」などのスウォッチグループや「IWC」などを擁するリシュモンの存在感が強い。日本勢は新たなファンの獲得に向けたブランド力の強化が求められる。※2回目からインタビューを掲載

日刊工業新聞 2024年02月26日

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