延べ走行距離5倍以上…KRIが長寿命EV電池サンプル出荷へ
KRI(京都市下京区、川崎真一社長)は、電気自動車(EV)の延べ走行距離を現状比5倍以上にできるリチウムイオン電池(LiB)の試作品を2025年度にもサンプル出荷する。蓄電容量30キロワット時で設計してEVに適用した場合、延べ走行距離を従来の16万キロメートル程度から80万キロメートル以上にできる見込みという。車載用途を中心に事業展開を検討する企業向けに提供し、企業の製品化を後押しする。KRIは大阪ガスの子会社。
LiBはリチウムイオンが均一に反応しないことで、劣化が進むとされる。このため材料や電極構造などを見直し、反応を均一化させることが長寿命化実現のカギとなる。
KRIは蓄電池の試作実証を手がける子会社エス・イー・アイ(津市)を通じ、反応の均一化について実証中。24年度中にも研究開発を完了させ、試作品を製作する計画。基本性能は蓄電容量が約10アンペア時で、エネルギー密度が1リットル当たり約400ワット時とする。
KRIは受託研究開発事業を手がけており、特に蓄電池分野では国内トップクラスの水準にある。22年に材料メーカーなどと組んでコンソーシアムを設立し、長寿命化に向けて研究開発を共同で続けてきた。
蓄電池の研究開発では、長寿命化が重要なテーマの一つになっている。背景にあるのは、資源の有効活用に関する潮流だ。EVが将来的に普及しても、使用する電力が再生可能エネルギー由来でなければ、二酸化炭素(CO2)削減について大きな効果が期待できない。
日刊工業新聞 2024年02月23日